ハンス・ユルゲン・プレス 『くろて団は名探偵』
くろて団は名探偵"くろて団"のメンバーは、男の子3人と女の子1人、それにリス1ぴき。犯人を追いつめる手ぎわのよさといったら、警察顔負けだ。さあ、あなたも絵をじっくり見ながら、"くろて団"といっしょに4つの事件のなぞを解いてみよう!小学3・4年以上。 【目次】 なぞの家/ビーバー湖の宝物/密輸業者のトンネル/動物園のどろぼう(「BOOK」データベースより)samiadoさんの日記で知って、注文して手に入れました。「岩波少年文庫」の児童書なのですが、何とも楽しそうで、ゆっくり楽しみたいと思ったのです。思ったとおり。いえ、想像以上に、楽しい本でした。原題は 『DIE ABENTEUER DER "SCHWARZEN HAND"』。<黒い手>の冒険、とでも言うところでしょうか。小学生の4人とリス1匹からなる、<くろて団>が、行き会ったり新聞で見かけたりした街の事件を捜査して、解決する話です。3ページ、文字で書かれたお話が進行し、そこで彼らが解く謎が、挿絵で示されます。次のページのストーリーの中で、絵解きの正解が書かれている、という構成の繰り返しです。作者はもともと、イラストや子供向けの漫画を描かれていたそうですが、4ページごとに出てくる挿絵はとても緻密で、しかも可愛く、楽しい。子供の頃、児童書を読んでいて、挿絵(下部に<こういう場面です>的なキャプションがあることも多い)のページがあると、「こんなもん、なくてもわかるわい!」と、ちょっと馬鹿にされたような気分になったりした生意気なあむあむでしたが、この本の挿絵には夢中になったでしょう。偽切手や動物園の動物泥棒など、ちいさな街に起きる大掛かりな事件を追うわけですが、<容疑者が持っていた切符の、映画のタイトルは?> とか、<ゆくえをくらました観光客は、何を持っていた?> とか、絵探しや間違い探しをして、<くろて団>とともに事件の真相に近づいていくのです。この謎解きが、なかなかどうしてよく出来ています。子供だましのクイズどころじゃありません。私も、気づけないものもありました。samiadoさんは、感想に「こんな本を、子供のころに読みたかったなぁ、と思いました」と書いておられます。私も同意見!子供の頃、岩波少年文庫の翻訳児童書を読んでは、外国の街並みや暮らしにあこがれをいだいたものです。この本の、4ページごとにあらわれるイラストにも、レンガ造りの建物が並び、珍しい台所道具を揃えたキッチンや、吹き抜けを上る螺旋階段など…事件もバラエティに富んでいます。『名探偵カッレくん』と『ウォーリーをさがせ!』と『タンタン――ビーカー教授事件』、このあたりが好きな方には絶対おすすめです。正義感あふれるリーダーに、しっかりものの女の子、食いしん坊、リスを連れた小柄な子、と、戦隊ものの編成のようにキャラクター豊かななかよしグループ、<くろて団>も魅力的です。そしてなにより、子供の頃なら私は乱視も老眼もなく、裸眼でじっくり、イラストに見入ることができたのです。そのほうが絶対楽しいに違いありません。とはいえ、大人になってからでも充分、いえ、十二分に楽しむことができました!