『六つの星星』
芥川賞作家、川上未映子の対談集。川上未映子の本は一冊も読んだこと無いのに、対談集が面白いと勧められていきなりこちらから読んでみました。読んだこと無かったから知らなかったけど、結構独特の文体(一文が長く、句読点が極端に少ない)で小説を書く人なんですね。それに思考も独特な感じ。そのユニークさが十分に発揮された(?)対談集です。6つの対談の内、最も面白くて興味深かったのが、生物学者である福岡伸一とのもの。分子レベルで私たちの体は常時猛烈なスピードで入替っていて、実は「固定した「輪郭」というものもない」のが生物であると。肌を触って何か実体があるように感じられるのは、「感覚がある程度鈍感にできているから」だという福岡伸一の答えに対して、じゃあ私たちの体は"蚊柱"みたいなものだと言う例えが面白い。蚊柱(笑)濃密な蚊柱って感じでしょうか。身体の中の各臓器も、大きな蚊柱の中にあるさらに小さな蚊柱。そう例えられると、私はなんだか気が楽になるように思える。そこの気持ちは川上さんに同意します。しかし、分子レベルでは刻々と入替っているのに、個人としては生まれて以来連綿と記憶が続いているように感じられる(私は私である)という感覚が持続するのはなぜなんだろう?入替る分子たちが、何かそういった"私という個人"というものを崩壊させないための秘密のキーワードみたいなものを受け渡ししているのかしら。福岡伸一さんの『生物と無生物のあいだ』も読んでみたい。