|
テーマ:ニュース(100160)
カテゴリ:役立ち法律と判例
(敬称を省略させていただきます) 先日、友人から「大停電事故を起こした三国屋建設の法的見解はどう思う?」と聞かれました。 最終的には裁判所が決めることなのですが、私も検討してみました。 まず、三国屋建設の法的見解は以下のとおりです。 →今回の接触事故による弊社の賠償責任について 確かに、「クレーンが送電線と接触したことと、発生した損害との間に「相当因果関係」が必要となります。(民法709条、同法416条)。」という部分はそのとおりです。 ですが、その後の結論である「クレーンが送電線と接触することにより、通常、予見される送電線の所有者の損害に限り、法的に賠償責任があることになります。」は違和感を覚えます。 まず、「通常、予見される」という文言を用いていることから、416条1項のことをおっしゃっているようです。 (損害賠償の範囲) 第四百十六条 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。 そして416条1項で言う「通常生ずべき損害」、すなわち民法上の相当因果関係というのは、客観的相当因果関係をいいます。 つまり、一般人が予見しえた事情を基礎に、一般人が相当と考える場合には因果関係があるとされます。 大雑把に言えば、一般人なら関係ありと感じる場合に、因果関係が認められます。 ですから、損害賠償の相手方は「送電線の所有者」に限定される筋合いは無く、相当因果関係さえあれば、誰でも損害賠償を受けられるのです。 それにも関わらず、根拠条文を示さないまま「送電線の所有者」に限定される理由がよくわかりません。 また、「今回の事故では、送電線の損傷により、停電が発生するかどうか、また発生するとしても、どの地区がどのような停電になるのか、また電力会社のバックアップがどうなのか、などなど、予測が不能でありました。結果は、ご周知のとおり停電が広範囲に及んでしまいました」というのは、主語が無いので趣旨がよく分かりません。 三国屋建設にとって予測が不能という趣旨であれば、全く無意味なことを述べたことになります。前述したとおり、416条1項では一般人が予測可能であれば因果関係が認められるからです。 一般人にとって予測が不能という趣旨であれば、なるほどとは思います。 ですが、道端の電線でなく川をまたぐ電線を切れば、かなり広範囲で停電が起きることは一般人に予測できるのではないでしょうか。 これは、裁判にならないと分かりません。 また、そもそも三国屋建設は416条2項の話をしている可能性も無くはありません。 2 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。 416条2項ですと、損害を三国屋建設が予測していることが必要となります。 ただ、電線切断に基づく停電による損害が「特別の事情による損害」と言うのはかなり難しい気がします。 このように三国屋建設の見解は、結論は分かるが理由が良く分からないと言うのが私の意見です。 また、電線切断事故というのは民法で片付けられるのでしょうか? 私は六法以外は良く分かりませんが、特別法は問題とならないのでしょうか。 ですから、絶対賠償してもらえるわけではありませんが、絶対賠償されないというわけでもありません。 ですから、多額の損害をこうむった場合は、弁護士の先生などの専門家に相談してみてはいかがでしょうか。 これからも応援してくださる方は、下記のリンクをクリックしてください。 人気blogランキング お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年08月24日 19時09分54秒
[役立ち法律と判例] カテゴリの最新記事
|