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2023.01.20
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カテゴリ:イマジン
家族ふれあい新聞平成16年第509号から

「ポルソッタ倶楽部」は私の畏友が400人ほどの人に送信していたメール通信(現在休止中)である。
私は田舎の父母が健在な頃、「家族ふれあい新聞」を父母だけのために作成し郵送していたのだが、その裏面によくこの「ポルソッタ倶楽部」を引用し、父母もまた楽しみに読んでくれたものである。
次の「路地」もその一つである。


【路 地】
研究室への通勤路は「路地」と決まっている。
そう、何をしなければならないではなく、今日は何をしようか。
そんなことをぼんやりと考える。
その場所としては「路地」は最適なのだ。
それに、通勤路となる長浜小学校、大分気象台その周辺になぜか路地が多い。
長浜小学校は、私が小学校の一年、二年と通った母校だ。
その頃も、その路地を通っているはすだ。
一メートル程度のその路地の幅が今ではやけに狭く感じる。
そうだろう。身長八十センチだった私でも、今は、一メートル六十となっている。
路地が狭く感じる。その時の隔たりが感じられてやけに嬉しい。
なにしろ路地は車が通らない。ゆっくりと歩ける。騒音がない。静かだ。
それにゴミがひとつも落ちていない。なにか気持ちも清々しくなる。
永六輔さんが言っていた。
「路地の掃除はそれぞれの家がそれぞれの家の前を掃除をする。
ある小僧が親切心から正面の家の前まで掃除をしたら、
その正面の家の隠居から叱られた。
『私の愉しみを奪うのかい。半分だけ掃除をすればいいのさ』。
そこで、小僧は翌日から路地の半分までをきちんと掃除をした。
また隠居から叱られた。
『少しははみ出して掃除をするものさ。互いにはみだして掃除をする。
すると、路地を歩く人は掃除を二度されたところを歩けるのさ』」
うん、その話を聞いた時、路地は粋なのだなと思った。
路地を掃除しているとおばちゃんに会うと、
「お疲れ様です」と声をかけてしまう。
路地を歩いていて人とすれ違うと、
見知らぬ人でも思わず「おはようございます」と挨拶をしてしまう。
そして……知らずのうちに歌を口ずさんでしまう。
静かだから安心安全だから、そうなってしまうのかもしれない。

路地は狭いから側溝は中央にひとつだけ走っている。
自転車はその上を走るということになる。
すると、側溝蓋がカタカタと音をたてる。
その音により、自転車が来たことを知る。脇に避ける。
「すみませ~ん」女子高生が通り過ぎる。なんとなく快くなる。
路地に沿って造られている家は建て替えがなかなかできない。
だから、古い造作の家が多い。
だから昭和の三十年代を思い出させる光景に何度も出くわす。
黄昏、西陽が路地いっぱいに入り込むところがある。
ガラスが輝く。植木鉢の花に光が注がれる。
夕食の惣菜をつくっているのだろう匂いが漂ってくる。
犬の鳴き声がひとつする。私は立ち止まってしまう。
空を見上げる。雲が茜色に染まりつつある。
そんな光景に出会うと、
通り過ぎて逝った友人、恩師、先輩、父親の顔が浮かんでくる。
「生きているということは寂しいものさ。
寂しさにはね、友人と酒を酌み交わしたり、映画を見たり、
旅へ出たりと気持ちをまぎらわせれば耐えることはできる。
でもね、寂しさが深くなるとせつなくなる。
せつなさはどうしようもないのだよ。
そう、ただため息を吐くしかないものね。
長生きをするということは、
そのせつなさに耐える強さをも鍛えなくてはいけないことなんだよ。辛いよね」
ある作家がそう言っていた。
そう、路地はいろいろなことを考えさせてくれる。
塀と舗装の間の狭い空き地に、小さな花が咲いている時もある。
住んでいる人が種を播いたのだろうか。
それとも風に乗って、ここまでたどり着いたのだろうか。
でもね、その可憐な花はね、ちょっぴりの「元気」をくれるんだ。
「こんなところでも、花は健気に咲いている。
そうだよな。自分もがんばらなくてはな」
だから、私は今日も路地裏を歩くのだ。





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最終更新日  2023.01.20 15:33:50



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