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テーマ:社会のあり方を考える(116)
カテゴリ:鉄道
人が存在する限り、
モノやサービスがどんどん進化していくのは世の常。 一度享受してしまった便利さは、 いつの間にか空気のように当たり前の存在となり、 人はさらにその上を行く便利さを追求するものです。 しかしその便利な状況は、ひとたびタガがはずれることによって、 もののみごとに以前よりひどく不便な状況を作り出します。 たとえばケータイ。 今や電話だけでなく、メールやモバイルバンキング、 モバイルショッピング、エンターテインメントなど、 生活のさまざまなシーンで切っても切れない コミュニケーションツールになりました。 しかしひとたび水に浸けると、みごとに使い物にならなくなり、 結果その人は、 世の中の動きからシャットアウトされた感覚に陥れられます。 たとえば流通(お店)。 今や百貨店や小売店、スーパー、そしてコンビニが 全国に縦横無尽のネットワークを作り上げており、 お金さえ持っていれば、ひもじい思いをすることはありません。 しかし10数年前に起きた阪神・淡路大震災のとき、 被災地はおろか関西一円のスーパーやコンビニから 商品はもののみごとに消えてしまいました。 コンビニやスーパーの食品売り場を 自宅の冷蔵庫のようにして利用していた人たちは、 地震直後、ひもじい思いをする羽目になりました。 そして今日。 連休明けの首都圏は、たった一つの鉄道路線で起きた車両故障がきっかけで ありとあらゆる路線のダイヤが乱れるというパニックを引き起こしました。 事故は単純でした。 JR横須賀線の横浜と新川崎の間を走っていた列車が、 ブレーキの故障で立ち往生し、 横須賀線は全線でストップ。 横須賀線と直通運転しているJR総武快速線は 即座に直通運転を中止し、折り返し運転に。 湘南・新宿ラインも横須賀線の線路を走っているため、 同線も運転見合わせ。 湘南・新宿ラインは、高崎や宇都宮まで直通している電車なので、 横浜-東京間だけではなく、遠く群馬県や栃木県にまで影響を与えました。 さらに復旧の目処がつかないため、 乗客を線路に降ろして歩かせることになり、 結果、横須賀線と並行している東海道線と京浜東北線もストップ。 京浜間のJR線は午前中、1本も列車が走らない事態になりました。 これだけではありません。 人の流動が盛んな京浜間がストップしたことで、 あふれた乗客が振替輸送先の東急や京浜急行に殺到。 今度はこれらの路線が身動きできなくなりました。 東急は東京メトロを介して東武線、 京浜急行は都営地下鉄を介して京成線などに直通しているので、 直通先の路線も軒並みダイヤ乱れ。 首都圏だけではなく大都市圏の鉄道は、 「より便利に」を合い言葉に、 遠い郊外から都心部まで直通電車を走らせ、 異なる私鉄同士で相互に乗り入れて、 「乗り換えなし」の便利なネットワークを作っています。 確かに過去にさかのぼれば、ターミナル駅で階段を上ったり降りたり、 電車の時刻を確認したり、キップを買い直したり、 と煩雑な手間がかかっていました。 それに比べると、今はとても便利になったことは否定しません。 しかしそれはあくまでも「平常時は」というマクラが付きます。 ひとたび正常な状態が保てなくなると、 便利さは一挙に昔以上に不便な状態に豹変します。 「多少の不便さが、むしろ弾力性を産むし ひいてはゆとりを持たせる」 今朝の首都圏の鉄道マヒを知って、ふとそういうことを思いました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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