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カテゴリ:防災・天気・防犯・事件
NHKの定番番組である『NHKスペシャル』は、
そのときに応じた旬の話題や、スクープ、 あるいは世間を震撼とさせた事件・事故の経緯など、 さまざまなテーマを切り口にして構成されており、 見ごたえのある番組です。 いろいろ意見もありましょうが、 僕的には「このテの番組はNHKしか制作できない」 と思っていて、それだけでも受信料を払う価値がある、 と考えています。 そんな中、昨日の同番組は、 たびたび放映されている『未解決事件』というシリーズで、 最近、世間の耳目を集めた 「尼崎殺人死体遺棄事件」が取り上げられました。 この事件では、 血縁関係もほとんどない複数の家族が、 黒幕の女性容疑者の網にかかり、 財産をすべて取り上げられた上、 中には物置小屋に監禁されて死亡してしまうケースもあるなど、 現代社会の常識ではにわかに信じがたい逮捕監禁の犯罪が、 市民生活のすぐ隣で繰り広げられていたことに、 大きなショックを世間に与えました。 鬼みたいな人間とはいうものの、たった1人の女性が、 多くの人間を同時に恐怖のどん底に突き落とし、 不条理な環境で支配していたことに、 この事件を知った者は一様に驚愕したわけです。 なぜ分別のつく大の大人が、 手前勝手で論理も無茶苦茶な一個の人間の 餌食になっていったのか。 その経緯が、さまざまな関係者へのアプローチとともに 丹念に取材されていて、 事件の背景がよく分かりました。 実に、人間の弱い心理を突いた事件であったと感じます。 番組の中で、 ターゲットになった家族は、 両親と子どもたちそれぞれが分断され、 子どもたちには優しく接し、親には辛く当たる、 という手法で家族間のつながりをバラバラにしていった、 というくだりがありました。 これなどは、「事態が表面化すると 肉親の誰かにしわ寄せが及ぶ」ことを当事者たちに想起させ、 逃亡や警察への証言を思いとどまらせる 効果を発揮することとなり、 結果的に事件として顕在化するまで長い時間を要した 大きな要素になっている、と報じられていました。 まるで北朝鮮の統治方法を思わせます。 こういう経緯は、この番組を見ることで初めて分かりました。 しかし同時に、信じがたいシチュエーションであるものの、 このような支配方法は成立しえる、とも思いました。 僕の周辺にもこういう人がいたからです。 その人も、関係者同士の心のつながりを分断させることに とても長けていました。 でも、今にして思えば、たぶん「賢い」とか「キレ者」だから そういう分断戦術に長けていたわけではないと思います。 もう当人にとっては、 ごくごく自然に出てくる考え・行為なんだと思います。 逆に、そういう発想がない周囲の人間に対して 「なんでこういう方法で支配をしないの? こんなにラクなのに!」 と思っていたりしたのかもしれません。 ところが、この種の人たちは、 表面的な態度とは裏腹に、 過度に自分以外の人間や環境の変化に対して とても敏感で、実はとても心根の弱い人間なんですよね。 「周囲に従っていたら、自分は殺されるかもしれない」 という、一見大げさな恐怖に、 真剣にさいなまれるのでしょう。 多くの人から見れば 笑って済ませられるようなネガティブなことでも、 その種の人たちにとっては絶対に笑えない。 だって自分の命にかかわることですから (そう堅く信じているものですから)。 それで、「やられる前に、支配しちゃえ!」 となるんじゃないか、そう思うわけです。 事件は、逮捕された容疑者が警察の留置場で自殺を図り、 あっけなく解明が頓挫してしまいました。 あれだけ強気一辺倒だった容疑者が、 いともたやすく自殺を選んだことに、 周辺からは「信じがたい」という反応が巻き起こりました。 でも、やっぱり容疑者は とても心根の弱い人だったんだと思います。 環境の激変に耐えられなかったんだと思います。 ちなみに僕の周辺にいた、似たような人物も、 まだ命はつないでいますけれども、 第一線から退いてしまいました。 自分でせっせと掘った地下深い落とし穴に、 自らダイブしてしまったかのように。
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