カテゴリ:読書
東野圭吾「さまよう刃」を読んだ。
(この記事はネタばれあり) 娘を少年二人に陵辱の上殺された長峰。 少年法では裁きが不十分と感じ、自ら復讐することを誓った。 この作品は救いがない。 いわば東野圭吾による問題提起の小説だ。 法律は何のためにあるのか? 警察の役目は? 織部刑事の目を通して、その問題は解決することなく終わる。 こうした復讐を描く作品は珍しくない。 ジョディ・フォスター主演の映画「ブレイブワン」でもそうだった。 この映画については以下の記事に書いた。 映画「ブレイブワン」 「さまよう刃」は織部による長峰の射殺で終わる。 その後、情報提供者が誰であったかが描かれる。 しかし、被害者家族にとって救われないことに変わりはない。 小説で描かれなかった「その後」はどうだっただろうか? 保護されたカイジは3年ほど服役して出所しただろうか。 和佳子は長峰の思い出を胸に、この先生きていくのだろう。 そして多くの人は、この事件を忘れる。 少年法の改正はあるかもしれないが、所詮は「他人事」でしかない。 東野が描く世界は、宮部みゆきと同じく「欠損家族」が多い。 長峰は妻を亡くし娘と二人暮らし。 事故で和佳子は娘を失っている。 悲しい事件を描く場合、この「欠損家族」が背景にあること。 それはストーリーを際立たせる。 もし和佳子の娘が生きていたら。 彼女は長峰を助けなかったに違いない。 「何かが足りない人」は、足りない何かを埋めようとする。 正しいか否かを別にして、それは確かだ。 「さまよう刃」を読んで思い出すのが本村洋さん。 光市母子殺害事件の被害者家族だ。 彼は、あの事件で奥さんと娘さんを失っている。 死刑を回避した一審判決後の記者会見で彼はこう語った。 「司法に絶望した、加害者を社会に早く出してもらいたい、そうすれば私が殺す」 (Wikipediaより引用) この言葉は「さまよう刃」での長峰に通じる。 我々は、被害者家族の気持ちにどう応えられるだろうか? バナーにクリック願います。 ***トラックバックはテーマに関係するもののみどうぞ。 その場合リンクは必要とはしません。 意見があればメッセージでどうぞ。 ただし荒らしと挨拶できない人はお断りです。 今のところメッセージは全て読んでいます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.01.16 13:57:34
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