今ごろ「オッペンハイマー」を見てきました。
遅ればせながら、7月14日(日)に、「オッペンハイマー」を見てきました。今年の3月の封切りで、封切館ではすでに上映は終わっていますので、「今頃?」って感じですね。とはいえ、見ていない方も多いと思いますので、お話の概略を簡単に説明します。オッペンハイマーは、「原爆の父」と言われ、アメリカが原子爆弾を作る「マンハッタン計画」を、科学者として現場で指揮した人物。第二次世界大戦中、ナチスドイツが「原子爆弾」の開発を行っていると知ったアメリカは、急ぎ開発に着手。なんとしても、ナチスよりも先に原爆を完成させるべく、その指揮を任されたのがオッペンハイマーです。ユダヤ系のアメリカ人で、当然、ナチスドイツには強い怒りを持っています。「原爆開発」の原動力は、ナチスドイツを倒すことにあったのは間違いありません。開発が進み、いよいよ完成が近づいたころ、ヒットラーは自殺し、1945年5月7日、ドイツは降伏。その時点で、「原爆使用」の当初の目的は失われました。しかし、研究は続行。原子爆弾の完成(実験成功) 1945年7月16日。原爆実験が成功し、その威力が確認されたあと、二発の原子爆弾が研究施設から運び出されます。この時点で、「悪魔の兵器」は、科学者の手を離れて、政治にゆだねられることになります。イギリス・アメリカ。中国の首脳が集まって、「戦後処理」をテーマとして行われた「ポツダム会議」が行われたのが、1945年の7月17日~8月2日。「原爆の完成」を「ポツダム」に間に合わせるようにせかされる様子も映画の中で描かれています。日本に無条件降伏を求める「ポスダム宣言」が出されたのは7月26日。すにで、その時点で、「日本はもうすぐ降伏する」というのが大方の見方でした。当然、「原爆の投下は不要」であったはず。しかし、それから10日後の8月6日、原子爆弾は広島に投下されました。この作品は、広島への原爆投下という悪行を批判する映画でも、オッペンハイマーの功績をたたえる映画でもありません。映画の冒頭では、ギリシャ神話の「プロメテウスの火」の逸話が登場します。プロメテウスは、人々の暮らしを豊かにしようと、天界から「火」を盗みます。しかし、その「火」は、人の生活を助ける一方、「火」は武器を生み、人々は激しく争い始めました。怒ったゼウスは、プロメテウスを磔にして、3万年間拷問したとか。物語はオッペンハイマーの科学者としての苦悩や、戦後の栄光と挫折、共産党との関係を疑われて行われた理不尽な聴聞会が描かれていきますが、このあたりは、アメリカの戦後史に詳しくない私にとっては、なかなか難しい内容です。原爆が投下された、広島、長崎の様子は一切出てきません。死者の人数だけが出てきます。核分裂の連鎖反応は、原爆投下時の爆発では終わらず、恐怖は今も全世界を覆っている、というのが大きなテーマと言えます。北朝鮮のような独裁的な小国でさえ、「核」を持つだけで大国が手出しできなくなってしまう。気の狂った為政者が一人いれば、世界は核の業火に焼かれてしまうというのが現実です。私が中学生のころ、筒井康隆の「霊長類南へ」という小説を読みました。私がSF好きになるきっかけとなった小説ですが、この話は中国が何かの拍子に核爆弾を発射してしまい、それが連鎖して各国がミサイルを発射。結果、放射能の少ない南へ南へと人間が逃げていくというドタバタ劇です。ラストは、確か、銀座の真ん中で、最後の生き物となったゴキブリが死ぬ、という内容であったと思います。それはともかく、「オッペンハイマー」は、難しい内容ではありましたが、いろいろ考えさせられる内容でもありました。