2024年全国通訳案内士試験について①~英語の問題を解いてみた
私が全国通訳案内士試験を受けたのは、2019年(1次&2次)と2020年(2次)。コロナ禍をはさんで、昨年あたりからインバウンド需要が激増していることから、この試験への注目も上がっているかといえば、そうでもないようだ。受験者数は年々減っていて、かつて1万人を超えていた受験者はコロナ禍が一段落したかにみえる昨年においても3600人あまりに留まっている。コロナの影響や法律改正によって「業務独占」資格から「名称独占」資格になったこと、資格を取っても、収入が不安定で、専業でやっている人はあまりいないことなどに加えて、試験自体、5教科受験しなければならず、結構な難問奇問が出題されるということも、ハードルを高くしているように思える。合格率は年によってばらつきはあるものの、概ね10~15%程度のようである。一方で、この資格に関して改善された点もある。今年から、通訳案内士が自家用車を利用してガイドをすることが可能になったのだ。タクシーのような免許を持たなくても、合法的に車で外国人の案内をできるというのはわりと大きなメリットだと思う。私はやらないけど。さて、そんな通訳案内士の試験だが、ひょんなことから、8月18日に行われた試験の解答速報の作成を手伝うことになった。以前お世話になった予備校の講師が試験日直前に体調を崩し、人手が足りなくなってしまったのだそうだ。といっても、自分が試験会場に行ったり、どこかに缶詰めになることはなく、送られてきた問題を自宅で解いて送ればよかったし、解答を作成するにあたって、ネットで検索したり、参考文献を漁ったりすることもできた。(そうでないと、合格後4年間、英語以外の科目をほとんど何も勉強していない私が模範解答など作れるわけもない。)一方で、解答速報ということで、スピードが命であることと、5教科を次から次へとこなさなければならないので、時間的には相当タイトで、思いのほか集中力のいる作業だった。加えて、たとえネットなどで検索しても、正解がよくわからない設問もあったりして、素人がいきなりこのような仕事をするのは大変だなぁと痛感した。まあ、解答速報はもちろん私一人で作るわけでなく、他の講師やスタッフが同時並行で作業して、最終的にそれらを照らし合わせるので、私の誤答やケアレスミスが世に出ることはなかった。ところで今回試験問題を解くにあたって、もっとも困惑したのが、実は英語の試験だった。というのも、英語については、私はTOEICの点数で免除をとったため、本番の試験を受験した経験がなかったのだ。なので、前週のうちに過去3年分の試験問題をやってみて、そのうえで本番に臨むことにした。<感想>・年によって難易度に差がある。2021年の問題は難しかった。逆に2022年は比較的容易だった。過去3年分解いてみた際の自己採点(辞書参照する前)は2021年約70点、2022年はほぼ満点、2023年80点台半ばだった。2021年に受験していたら、不合格だったかもしれない。2024年については、最初から辞書を引きながら回答したので比較しずらいが、この4年間の中では中程度の難易度に感じられた。・単純比較は難しいが、感覚的にはTOIECよりかなり難しく、英検1級よりは易しい印象。ただし、TOEICの場合、難易度よりも制限時間内に大量の問題を処理しなければならないことが大きな試練といえるので、単純にTOEICで免除を取るほうが楽、ということでもない。・前半の穴埋め問題は決して易しくないし、結構時間を取られる。・和訳問題は、細かいディテールやニュアンスの正確な再現が求められる(私は最近アバウトな和訳に慣れてしまっていたので、最初かなり戸惑った。)・文意を問う問題も、なんとなくの感覚で答えると誤答になりがち。正誤の根拠をきちんと確認することが求められる印象。・中には英語の知識だけでなく、通訳案内士の他科目(歴史、地理、一般常識など)の関連知識が求められる問題もある。※(例)地理や一般常識の知識が必要と思った問題(2024年)4-4 妻籠宿①It is one of the post towns of Kosyu-Kaido Road, one of the Five Highways.②The walking course between Magome-juku in Nagano and it is popular for foreign tourists, and in recent years it has been called "Samurai Road."③It is the birth place of Toson Shimazaki, the author of the novel," Before the Dawn", which opens with "The entire Kiso Road is in mountains."④It is one of the first districts designated as a Preservation District for Groups of Traditional Buildings.⇒①は中山道の誤り。②は二重に誤りがある。ひとつは文法的な誤り。もうひとつは馬籠宿が長野県という記述(正しくは岐阜県)。③島崎藤村の生誕地は妻籠でなく馬籠。とはいえ、中山道の宿場町は今、外国人観光客に人気のスポットなので、これらのエリアを勉強しておくことは通訳案内士試験受験者には必須の知識だ。そういう意味では良問ともいえる。※少し意地悪だなと思った問題(2024年)4-3 小豆島① It is regarded as the birthplace of Somen,and Somen is still a local specialty there.② It has prospered through the soy sauce production, and it still has more than ten breweries.③ With its temperature climate and much rain, it is suitable for growing olive and its cultivation is popular.④ It has prospered with the brewing of Sake since Edo Period, and it still has more than ten breweries.⇒この問題、小豆島と言えばオリーブだろうと思って、うっかり③と答えたのだが、正解は②だった。③の何が誤りかといえば、文法だった。(its temperature climateの部分)。内容の正誤にばかり注意が行って、基本的な文法の誤りを見落としていた。でもって、小豆島はオリーブだけでなく、醤油の生産地でもあったのだ。そんなわけで、文意の正誤と文法の正誤が混在していたり、和訳問題で細かい違いを問われたりと、かなり「クセ」のある試験だなぁと思ったが、問題の傾向に慣れれば、こちらの方がTOEIC で免除を取るよりむしろ楽かもしれないとも感じた(TOEICは900点以上必要な上、免除期間が実質1年間に限られるというデメリットもある。こちらは初年度に合格点をとれば翌年も免除になる。)ただし、英語を受験すると、それだけでかなり疲れてしまい(試験時間90分)、午後4教科の試験で集中力を保つのはかなり大変だろなぁとも思う。※長くなったので、次(社会科4教科編)に続く。