|
テーマ:楽天ブックス(344952)
カテゴリ:歴史
佐藤賢一の新書『ブルボン朝』を読んだ。感想を書いていこうと思う。
![]() ブルボン朝 フランス王朝史3 (講談社現代新書) [ 佐藤 賢一 ] この『ブルボン朝』は佐藤賢一のフランス王朝史シリーズの3作目である。先行するものに『カペー朝』と『ヴァロア朝』がある。 ブルボン朝はたかだが225年程度でしかなく,ヴァロア朝は260年,カペー朝は340年。つまりブルボン朝が一番短い。ところが,本の厚さはブルボン朝が一番になる。『カペー朝』の倍近くになる。ところが,お値段は数百円高くなるだけなので,最も厚い『ブルボン朝』がページ当たりの単価は最安ということになろうか。 ![]() そして,おおざっぱに目次とページ数を並べると,こう。
ページ数がそのまま著者の関心の高さとはならないだろうが,一定の目星にはなるだろう。最もページ数の短いルイ13世について著者は,「『三銃士』の作中ではどうも印象が薄い。」だの辛口である。あとでルイ16世の評でも触れるが,著者の中では最も評価が低そうだ。 さて,すべての王について僕の感想だとか意見を述べるには紙幅が足らない。断腸の思いで2人に絞ることにしよう。 まず1人目は大王アンリ4世だ。ページ数ももっとも多い。 厳密にいえば,アンリ4世について叙述した第1章は彼の生涯をまとめたものだから,王に即位するまではヴァロア朝ではあるのだが,細かなことは言うまい。 僕はデュマの小説『三銃士』を愛読しているのだが,やはり作中でアンリ4世の評かはすこぶる高い。 主人公であるダルタニャンと同郷のガスコーニュ出身で,パリから遠く離れた片田舎から天下を取ったわけだから,「俺もアンリ4世みたいになってやる」とダルタニャンが憧れるわけだ。 そんなアンリ4世の生涯を見ると,これはもう,変節漢というべきだろう。もともとプロテスタントの首魁であったはずなのだが,命の危機となるとカトリックに改宗する。生涯で5度の改宗というのだから,いったいこの男はどうなっていたのか,そう思わざるを得ない。 まともに考えたら,こんな変節漢が社会的信用を得られるはずがないのだが,アンリ4世はフランスの内乱を平定した大王である。 改宗についても抜群の政治感覚があったというべきなのか。 そして僕が選ぶ2人目の王がルイ16世だ。 彼の後にもルイ17世だとかがいたものの,実質的にはルイ16世がブルボン朝最後の王というべきだろう。 僕はたまに考えるのだが,ルイ16世はいったいどうすれば良かったのだろうか? 革命で殺された王はルイ16世だけではない。チャールズ1世なんかもそうだ。世情が悪かったのか,どうすればフランス革命の嵐を乗り越えられたのか。 著者の中でルイ16世の評価は決して低くはないようで,「パッとしない王」とまで論じながらも,こう述べている。 実際のところ,例えば祖父のルイ15世では,ここまでは戦えなかっただろう。 ある意味でこの引用部分が著者によるブルボン朝の王たちの政治力というか,評価というべきか。 アンリ4世を頂点として,ルイ16世とルイ14世がほぼ同格。これにちょっと及ばないのがルイ15世で,最も評価が低いのがルイ13世となるわけだ。 著者は,どうやってアンリ4世が切り抜けたのかは考察していないものの,生涯5回も改宗し,それでいて社会的信用もあったアンリ4世だ。 危機となれば第三身分に迎合し,第三身分とともに貴族の既得権益を攻撃する方に転向し,時機を見て貴族に肩入れもできたかもしれないな。 全体のまとめなのだが,本書はブルボン朝の王を中心に描かれているので,例えばダルタニャンなんかルイ13世のところに軽く名前が出てくるだけである。実際,歴史に名を遺すほどの功績がないといえばそうなのだろうが。 王朝史シリーズは終わったのかもしれないが,次は王以外にも焦点を当てて,たとえばダルタニャンと同時期に活躍した軍人,コンデ大公とかテュレンヌ子爵なんかについても知りたいものだ。 ![]() ブルボン朝/佐藤賢一 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2019.06.27 18:13:34
コメント(0) | コメントを書く
[歴史] カテゴリの最新記事
|