半年前に、全国に波紋をよんだ「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」が、
昨日5月10日よりついに運用開始となりました。熊本市内の慈恵病院です。
親が育てられない新生児を匿名で受け入れる“ゆりかご”は、扉を開けるとブザーが鳴り、
看護師が病院2階の新生児室のモニターで確認してすぐ駆けつける仕組み。
「救える命を守るため」「子捨てを助長する」・・ 本当に賛否両論で、安部総理の見解も
熊本市側と設置発表当初は異なったため、どうなることかと見守っていましたが、
個人的には率直に言って、意外と早く運用までこぎ付けた、と感じています。
もちろん、もっと早く運用開始できていれば失われずに済んだ命があったのかどうか
判りませんが・・。日本国内初の開設で、さまざまな問題に直面しながら、病院宛には
「街宣車を出す」「爆弾を仕掛ける」などの悪質な嫌がらせメールもあった中で、
よく頑張って半年で開設したと思います。
しかしこれから先、問題が山積みです。
預けられた子が将来自分の生い立ちについて知りたくなったら?
親の人権もあり、「匿名で預けられる」とされている親の匿名性と
子どもの権利の双方を確保するのは、容易なことではありません。
病院のある熊本市島崎周辺では、以下のようないきさつがあります。
地元紙、熊本日日新聞5/11付朝刊より引用します。
【熊本市島崎の慈恵病院周辺は1898年にマリアの宣教者フランシスコ修道会によって
修道院が創設されて以降、ハンセン病療養施設や老人ホームなどが建てられ、
「聖母ヶ丘」と呼ばれていた地区。
1980年までは児童養護施設・琵琶崎聖母愛児園もあり、園で暮らす子どもたちが
多くの家庭を訪ねたり、「聖母ヶ丘」の盆踊りに住民が参加するなど地域との交流もあった。
そうした地区の歴史から、「ゆりかご」を抵抗なく受け入れる人も多い。
(以下、周辺住民の声だけ抜粋)
★「聖母ヶ丘では昔から子どもを引き取って育てていた。『ゆりかご』を安易に利用するのは
よくないが、違和感はない」無職女性・74歳
★「子どもを簡単に捨てる人が増えないか心配。苦しくても思いとどまってほしいので、
利用する人を見かけたら声を掛けると思う」無職男性・71歳
★「看護師さんに励まされたことが忘れられない。病院は子どもについての相談を
受けてきたので、『ゆりかご』の運営に不安感はない」同病院で主産した主婦・44歳
昨年11月の計画発表から全国の注目を集めていることについては、
★「普段の生活の中で特に影響はない」主婦・45歳
★「全国初のケースなので、周囲を気にして利用者が出てこないかもしれない」
会社員・男性?・47歳
・・引用終わり】
熊本市・県・その他相談所では、「こうのとりのゆりかご」を利用する前に
まず相談してほしいと呼びかけ、電話相談体制を強化しました。
が、それと同時に私は地域ぐるみで親に命の尊さ、責任の重さを
教えることが大事だと思います。殺伐とした世の中で暮らしていると、
物事の判断基準がずれてきます。昔のようなご近所付き合いも、
親にとっても子どもにとっても大事な教育の一部です。
設置された「こうのとりのゆりかご」が、利用されることがないよう願ってやみません