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2023/09/12/火曜日/30度超えの残暑は厳しい 9/8 地下鉄半蔵門駅を出ると台風の風雨音凄まじ。 濡れそぼりながら、劇場までの道を急ぐ。 この劇場は10月には建替のため閉館となる。 新館ご披露は6年先とか。 帝国ホテルといい、国立劇場といい、歳月や昭和も遠くなりにけり。 この3.4年 文楽、殊に浄瑠璃に惹かれて、2ヶ月毎の上演が楽しみで通った。 5月からの通しの菅原伝授手習鑑の後半と曽根崎心中 演目が、あぜくら風の国立劇場最後の上演となる。 文楽では五段目終章を演じられることは稀らしく、今回はなんと51年振りに最後まで演じられるとあって、本年の近松門左衛門三百回忌にも相応しく、観客も熱気の満席。 10:40開始で、五段目が終わると18:00を過ぎていた。途中休憩を挟んだり 寿式三番叟 などの演目もあったが長丁場だ。 とざい、とーざい 三段目 車曳の段 演じられた頃大阪に三子が生まれ話題となったことを背景に、大阪は佐田の地の、菅原道真公別邸の管理任された百姓に三子の息子があり。 京で賜ったご奉公は夫々主人を異にして、政治権力の悲哀をかこつ。三子も主人の忠義と父親古希祝いの孝行の板挟み ◼️不忠の上に不孝の罪、桜丸 場所は京の吉田山。吉田神社は藤原一族が春日大社から勧請した、そのお社に藤原時平が参詣す。 舎人の杉王丸を演じる南都太夫の気迫と熱に染まる会場 牛車の長柄を引くは松王丸。 豊竹藤太夫がピタリとハマる。 敵対する梅王丸と桜丸、兄弟同士のあわや一戦が、お社の前で流血ならぬと時平一声でその場収まる。 梅王丸の小住太夫が、出番毎に素晴らしく伸びているように感じられる。ここまで。役割毎に太夫が変わるのも珍しく。 茶筅酒の段 場面は河内国の佐田村、官公別邸。舞台上座には仲良く並び植えられた菅公愛樹の松、梅、桜。 三子の名は菅公自ら授けた主従のご恩あり。今般の古稀に、やはり菅公より新名白太夫を賜り、祝膳の儀。 嫁らがわらわら参じるが、その名もそれぞれ千代、春、八重と麗しい。 八重の贈り物三方、八重だけを連れての氏神詣の前触れが、華やかで和やかな場面にあって、三味線の無音の音のようにこれからの悲劇を奏でる。 喧嘩の段 ようよう三子の内、松王丸と梅王丸 ◼️「ムゝ桜丸はどうして来ぬな。アゝ待ちかねる者は来いで、胸の悪い見とむない面構へ」 とうとう掴み合いの喧嘩が始まり、桜の枝を折ってしまうアクシデントのクレッシェンド。 訴訟の段 折れた桜を咎めず、白太夫。 梅王丸の管公元へ参じる願書を聞き入れず、松王丸の勘当は受入。主人時平と敵対する兄弟を心置きなく討つためだろうと松王丸夫婦を追い出す。 この段の豊竹芳穂太夫が好い。 桜丸切腹の段 切、登壇。竹本千歳太夫 三味線、豊澤富助 うーん、年季が違う。重みが違う。先代名人の浄瑠璃をたっぷり聴いて蓄えた財が違う。それあっての切腹の段のお勤め。 ◼️「頼みも力も落ち果てゝ、下向すりや折れた桜。定業と諦めて切腹刀渡す親、思ひ切つておりや泣かぬ。そなたも泣きやんな、ヤア」 「アゝ、アイ」 「泣くない」 「アゝ、アイ」 「泣きやんない」 「ア、アイ」 ◼️「御恩も送らず先立つ不孝。御赦されてくだされい。下郎ながらはじをしり、義のために相果つる」 ここにおいて涙滂沱である。下郎ながら恥を知り。 日本人の琴線に響く。そこに被さる老親打ち鳴らす鉦撞木 浄瑠璃も三味線も人形も観るものも演じるものも渾然一体。 折れた桜を咎めぬ不思議で様子を伺っていた梅王丸は、後を追おうとする八重を引き留める。 白太夫は松王丸にあとを託し筑紫へ旅立つ。 四段目 天拝山の段 あれから一年が過ぎた、のどかな山の広がる筑紫。菅公を乗せて牛を引く白太夫 ◼️「東風吹かば匂ひおこせよ梅の花主なしとて春な忘れそ」 侘び住まい近所の安楽寺に一晩で梅の木が生えた事を知った矢先、梅王丸が主人菅公の元に馳せ参じて、御台所と子息の菅秀才が無事であることが伝えられる。 ◼️「梅は飛び桜は枯るゝ世の中に何とて松のつれなかるらん」 筑紫まで追いかけて来た時平家来の平馬の白状で、時平の皇位を狙う企てを知り、菅公は雷神と化し帝守護のため都へ飛んでいく。 豊竹藤太夫 鶴沢清友 ー幕ー お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.09.12 11:37:46
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