『画家と庭師とカンパーニュ』ジャン・ベッケル監督(2007フランス)その5
DIALOGUE AVEC MON JARDINIER
Jean Becker
105min(1:2.35)
(桜坂劇場 ホールCにて)
(つづき)
さてタイトル考に戻って邦題『画家と庭師とカンパーニュ』。画家と庭師を列記することで、この映画が画家と庭師の二人の物語ではなく「うちの庭師」と言っている画家の物語であることを見えにくくしている。またカンパーニュ(田舎、カントリー)を付したことで、いたずらに田舎がテーマであるように感じさせてしまう。しかしこれも「パリ人が見た」田舎なのだ。
「ワインやボウルで飲む朝食のカフェオレ。正にフレンチ・カントリーの世界!」と感動を表現した日本人・女子のレビューを読んだ。しかし手のない大型の瀬戸のカップで飲むモーニング・カフェオレはパリでもそうだし、ワインにしてもフランス人にとって珍しいものではないし、カントリーチックでもない。そういう流行のオシャレチックなことを楽しむのは大いに結構だけれど、作品の持つ本質にはもっと気付いて欲しい。
しかしながらボクは最初の回で、物足りないとか、尖った部分が減ったとか言い、低い点しか与えなかった。それは一つには批判的部分をあまり明確にしなかったことによる。というか、ここまで書いて来たように批判を内包することは十分理解出来るのだが、そのやり方が稚拙過ぎたということだ。そしてこの稚拙さが第二の理由なのだが、色々な点でリアリティーがなさ過ぎる。自分の生活や妻との旅行について庭師が語る内容は、まるで安っぽいコントのごとくだ。かと言ってニヤっとさせられるような洗練された笑いを含むものでもない。
言いたいことや理解して欲しいことは、この手の映画では、まずリアリティーのある人物・行動・会話を描いておいて、その中から観客に伝わるようにするべきで、決してリアリティーを犠牲にしてまで、「こうすれば、これが理解される」というあまりに短絡的な表現はするべきではないということだ。