バスルームから愚痴をこめて
このところ、ずっと宗二の入学準備に追われて健三に構うことが少なくなったからだろう。何かにつけて因縁じみた絡みかたをしてきたり体育すわりで両手を目に当ててスンスン泣いたり、布団の中で丸くなり、この世の終わりのような泣き方で自分の事をアピールする。宗二は宗二で「俺、1年生だもんね」と自覚がついていたのか自分でやろう、という意欲を見せれば見せるほど、その兆候が強くなってきた。調子がいい時は自分も年中さんになったから、と張り切るし、宗二不在の保育園でも何とかその部分に折り合いをつけてお友達との関係も大体うまくやっているようだ。どうしても外れない夜のオムツも「もう買わないで!」と拒否するようになった。宗二は今までずっと靴下を履かない子だった。だが、さすがに学校に通うようになってからは靴下くらい履いた方がいいんじゃないか、と宗二に選ばせて靴下を買った。(こんなに大きくなった子に靴下の履き方をレクチャーするとは思わなかったが。)普段、子どもたちは旦那と一緒にお風呂に入る。そしてそのあとあたしが一人でお風呂に入るのが定番になってきたのだが、ここの所連日、あたしが風呂に入ると健がやってくる。そしてお風呂場の入り口に座りこみ、愚痴とも恨み節とも言えるようなことをず~~~~~~~~~~~~とつぶやくようになった。そして、今まで靴下を履いていなかった健も同じように靴下を履きたいと思っていたらしい。「おりぇ(俺)もね、くつちた、ほしかった。おりぇね、かぶとむちのくつちたがはきたいの。」なぜその場で言わない?と突っ込みたくなったが、彼は彼なりにグッとこらえていたんだろう、と思うとなんだかいじらしくてかわいそうになってくる。シャンプーを洗い流してから「健、もう一度ママと一緒にお風呂で暖まる?」と聞くと顔を見られたくないのかサッと逃げてしまう。ドアを閉めるとまたやってきて恨み言…教会に懺悔に来ているんじゃないんだからさぁ。そこで、「じゃあ、ママ明日、健と一緒に靴下買いに行こうかな」そういうととても嬉しそうな声になった。だが、靴下を買ったからと言って恨み言がなくなったわけではなく、その日に保育園であった嫌なことなどを話すのには変わりなかった。きっと何か吐き出したいんだろうな、と思ったのでお風呂タイムは口から吐き出される蜘蛛の糸のようなか細くて頼りない、でも強くてなかなか切ることができない、意思を持った呪詛を聞き続けることになりそうで、それがまた嬉しくもあったりする。4月17日この日は広告代理店の人との打ち合わせ。少し肌寒い日だったので温まるものを。●クリームシチュー●ガーリックライス にんにくのみじん切りとフレッシュパセリ、 パプリカをオリーブオイルでご飯と炒め、 味付けは塩コショウのみのシンプルなもの。●サーモンのカルパッチョ お刺身用のサーモンが安かったので、新玉ネギのスライスと イタリアンドレッシングで。4月18日なんだっけ、この日も忙しくてあるものをかき集めた感じの夕食。夜遅くなってからホッシーがふらっとやってきたのは覚えているが。●皿うどん 皿うどんの素が売っていたので、残り野菜とエビ・イカを使って。●ホイコーロー これもクックドゥを使用。●海苔のお吸い物 とろろ昆布と焼き海苔を細かくしたもの、 すりごまと麺つゆを入れてお湯を入れただけ。4月19日この日、やっと宗二の座布団カバーやら色々作る事が出来た。●パパ寿司 ちょうどテレビで白魚の踊り食いをしているのを見た龍一が 「俺も白魚食べてみたい!」というのでスーパーに買いにいくと また真鯛が安かったので1匹購入。 白魚は軍艦で、真鯛は握りで。 ●枝豆 生の枝豆が売っていた。(とはいえ台湾産) 迷っていたら「台湾じゃ大丈夫だろう」と言う旦那の声。 やはり冷凍とは美味しさが違う。●鯛のカブト焼き●あら汁4月20日この日、いただき物が2種類。畑から掘り出して来たばかりのみずみずしい大根と天然、採り立てのたらの芽。早速夕食の食卓に。●てんぷら たらの芽・レンコンのかき揚げ・ 新玉ネギと春菊、ニンジンのかき揚げ。●ざる蕎麦●むかご 塩茹でした物。 子どもたちは恐るおそる口にしたが、 食べてみると美味しいとわかったらしくよく食べた。 確か、去年は「むかごご飯」にしたと思ったが…●ホタルイカの沖漬け この時期だけのホタルイカ。 「ちおから」大好きの健三はもちろんお気に入りの味に。 翌朝も「おきづけごあん」とリクエスト…4月21日●肉豆腐 昼間に作っておいて、 じっくりとお豆腐に味を染み込ませた肉豆腐。 新玉ネギもしんなりして砂糖とは違う甘みがじんわり。●だし巻き卵 いただき物の大根おろしを添えて。●菜飯 大根の葉っぱは細かくみじん切りにし、 塩でもんでアクを出し、 炊きたてのご飯にごまと一緒に混ぜ込んだもの。 葉っぱが大きくて少しエグミがある時は サッと湯通しするといいと思う。●ホタルイカの沖漬け●味噌汁 具は豆腐と生海苔。4月22日●大根サラダ 大根は細かい千切りにして水にさらしておく。 水分を充分切ってもみのりを乗せて。●ジャーマンポテト 新じゃがをまるごと茹でて、 新玉ネギ・ウインナー・ニンニクのみじん切り・ ローズマリーと一緒に炒めたもの。●チキントマト煮 トマト煮をオムレツを乗せたご飯に添えてみた。●コーンポタージュ4月23日久々に、こんにゃくを手作りした。去年はとても上手に出来たのに、今年は少し空気が入ってしまったのか滑らかさがいまいち足りない気がする…●刺身こんにゃく つけダレは酢味噌とごま油に岩塩を挽いたものの2種類。●とろろ もみのりと生卵入り。●ウドのキンピラ●焼き魚 義実家からもらった塩引き鮭。●味噌汁 具は大根となめこ。そして翌日に健三が希望するクワガタの刺繍の入った靴下を一緒に買いに行ったのだが、それがとても嬉しかったようで、寝るときにもはいて寝る。こういうことをされると本当に嬉しくなる。買ってよかったな~と心の底からしみじみとそう思わせてくれる。…と、自分を考えると…あたしはあまり嬉しい感情を出さない、というか出せない子だった事を思い出す。祖母のやっていた割烹料理店では、よくお客さんからお小遣いをいただいた。だが、親が受け取るのを遠慮するのを見て、あたしも最後まで固辞する子だった。子供なんだから遠慮しつつもどこかで折れて、にっこり笑って「ありがとうございます!」と言えたらきっとお客さんも嬉しかっただろうし、あたしも嬉しかったはずだ。結局受け取ることになったときにはにっこり笑うのではなく、多分、困った顔をしていたはずだ。もちろん、内心は嬉しい。でもそれを顔に出すこと、行動に出す事をあまりしなかった。だからそこをよく母親から指摘されていたが、こうして子供を持ち、やっと気づいた。(やっとかよ。)あたしが小学生になった時、両親があたしにランドセルを買ってくれた。そのときも「背負ってごらん」と言われるまでじっと見ているだけだった。そして背負ってもすぐにおろしてしまう。「もっと喜んでくれるかと思ったのに。」そう言われたが、もちろん、嬉しい。だが、どうしてもそれを出すことができずに母達が見ていないときにそっとランドセルを背負い、姿見で自分の姿を見てニヤニヤしている子だった。今年、同じ光景を見た。そう、宗二がそっくり。奴もランドセルが届いた当日はあたしが言われた事をそのまま言ってしまったのだが、翌朝は早起きしてパジャマ姿でランドセルを背負い、テレビを見ているのを目撃してしまったときには思わず吹き出してしまった。