テーマ:今日のワイン(6010)
カテゴリ:フランス その他
ゴビー、と聞くと、何故か、というかただ単に響きが同じなだけだが、「バンブルビー・ゴビー」という言葉を思い出してしまう。では、「バンブルビー・ゴビー」とは何か。たぶん、ワインとはまったく何の関係もない、僕の個人的なこの音韻連想を除けば。「バンブルビー」とは、ハナマルバチのことだ(確か)。「ゴビー」とは、もちろん、「ゴルビー」の親戚でも何でもない(親戚だとしたら、ゴルビーは「シーマン」だということになる)。では、「バンブルビー・ゴビー」とは何か。所謂、アクアリウムフィッシュ。東アジアの汽水域のハゼだ(分類学上ほんとにハゼなのかどうかはしらないけど)。黄色と黒の縞模様がハナマルバチに似ている、ということでこの名が付いたらしい。南仏のこのドメーヌの名前を聞くと、そのたびに、どうしても、この小さなハゼの名前が頭に浮かんでくる。そして、その次に、ゴルビー。・・・最後には、「ミハエル、ミハエルッ」とパンクの女王ニナ・ハーゲンの連呼が頭に響きはじめる・・・ かなり以前から、このドメーヌのワインは気になっていた。何年か前に赤のムンタダがボルドー一級を総舐めにした、というような話題のためではなく(ただ注目されるきっかけはこの快挙だった。そして、ネットに露出しはじめたのも)、このラベルのせいで。おしゃれで面白いラベルだと思った。このラベルの他に、気を惹くラベル、欲しくなるラベルといえば、僕が毎年気になっているのは、ドメーヌ・トレヴァロン。一枚だけ持っているが、その後は一向に集まる気配がない。というのも、中身が価格に釣り合っているとはとても思えないからなのだが。 そして、ただ気を惹くラベルというだけじゃなく、以前、ラベルを見て、ブルゴーニュの知識など僕よりもさらに少ないにもかかわらずカミュゼを引き当てた実績がある奥さんも飲みたいというなら、一度は試さないわけにはいかない。 グラスは何を使おうか。 まずは、ボルドーブラン用のソーヴィニヨングラス。 グラスに注ぐと、鼻を近づけなくても、さらりとした甘みの澄んだ蜜のような香りが、かすかに部屋中に漂っている。濃厚なものではなく、ほのかに漂っているところがとても好感が持てる。 色は、照りのある黄金色。重い感じ、粘っこい感じがする金色。 あらためてアロマを聞くと、ボルドーというよりはまるでブルゴーニュのシャルドネ。 スワリングすると、ハチミツの香りが主な、よく熟成したシャルドネ。ただし、シャルドネのように重くない。とても軽い。 口に含むと、つるつる、すべすべした舌触り。同じつるつる、すべすべでも、その感触がいかにも南方っぽい。また、匂い同様、いかにもシャルドネっぽい淡いハツミツや柑橘類のワタのような風味はあるけど、さらさらしていて、軽い。中盤から後半にかけて、よく熟した、柑橘類。フィニッシュはホットで、粉ミルキー。 二杯目は、シャルドネグラスで。空気に触れる面積が広がって、香りも広がり、華やかになるが、その分、薄っぺらくなり、かつ何か金属的なニュアンスまで。その金属的なところが、鼻先で火花が散っているような感じさえする。風味はこれといった変化は見られない。 以降、香りに、深み、奥行き、凝縮感が出るソーヴィニヨングラスで。 三杯目。澄んだハチミツの匂いはそのままに、柑橘類のピール、スギ・ヒノキ、メロン、石鹸などの匂いが加わる。石鹸は神経につんとくるような不快感はまったくない、かすかなもの。柑橘果汁、ヒノキ・スギ、ハチミツなどが静かにとけあった個性的な風味。フィニッシュは胃までさわやか~。 風味は最初一見ブルゴーニュ風だったけど、スタイリッシュさ、エレガンスはボルドー譲り。 しかも・・・この舌触り。一杯目はさらさらしていたが、二杯目から、ムワル~。いや、舌に触れている表面はあくまでもつるつる、すべすべしているが、舌の上を転がる全体の感触がまったり、ゼラチンのよう。しかも、このすべすべ・つるつるした感触がなんとも官能的。官能的といっても、淫乱でもなければ、いやらしくもない。とくに清楚というのでもないが、爽やかなのに官能的。シャルドネのような押しの強い(シャルドネの押しの強さはマドンナみたいだと感じることがあるが)豊満なボディを見せつけてくるわけではなく、控えめで上品。だが、内向的ではない。 この爽やかな官能性は、どこかのこぢんまりとした隠れ家のような宿で、みずみずしい肌の、しかししっとりとものごしの落ち着いた若女将から、気配りの行き届いた接待を受けているような心地よさで僕を包み込んでいく。さりげないが、すみずみまで神経がいき届いていて、控えめだが足りないものはなにひとつない。(2006/9/28) ムワル~ ラベルで カミュゼ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006/09/28 10:27:14 PM
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