ケニー・バレル&ジミー・レイニー 『2 ギターズ(2 Guitars)』
ギターから聴き始めるジャズ 本作『2 ギターズ』は、ケニー・バレル(1931年生まれ)とジミー・レイニー(1927年生まれ)という、ほぼ同世代の2人のギター奏者名義のアルバムである。筆者が最初に聴いたジャズ・アルバムのうちの1枚であるため、個人的に思い入れのある盤なのだが、ジャズがよくわかっていない状態で聴くという意味で、いいアルバムに出会ったと今でも思う。 その理由は、まず、ギタリスト二人が大きくフィーチャされ、スタイルの違う二人(メロディックなレイニーとブルージーなバレル)が楽しめるという点。クラシックを聴いていた人ならともかく、少なくともポップやロックを聴く人には、ギターは比較的親近感のある楽器であり、それゆえ、ギター中心のアルバムは、ジャズを聴き始める最初の段階で聴きやすいと思う。逆に言えば、管楽器はジャズ入門者にとって、しばしば違和感を伴うものである。「まずはマイルス・デイヴィスを聴け!」とか、「チャーリー・パーカーは基本だ」とか、「(ソニー・ロリンズの)『サキ・コロ(サキソフォン・コロッサス)』は名盤だからまず聴いてみなよ」などと管楽器奏者の有名アルバムを勧められてジャズを聴こうと思い立った人が尻込みしてやめていくというパターンは結構あるように思う。ピアノ中心のジャズから聴き始めるというのも一つ(その典型がビル・エヴァンス)だが、ギターからスタートするというのも入りやすさという点ではいいように思う。 さて、本筋に戻ると、ギターだから何でもいいというわけではなく、本盤の二人はいずれも実力のある著名なジャズ・ギター奏者である。それでいて、ギターの音の合間を埋めているのは、マル・ウォルドロンという、これまた人気のピアノ奏者である。これだけなら単に"聴きやすい"(いや、下手をすると"退屈な")だけの盤になったかもしれない。けれど、本盤には、さらに、ドナルド・バードのトランペット、ジャッキー・マクリーンのサックス(アルト・サキソフォン)という、これまた有名どころの管楽器奏者の演奏が7曲中5曲に含まれており、"管楽器に徐々に慣れる"のにも適している。バードやマクリーンだけを個別に取り上げるともっといいアルバムがあるという声が聞こえてきそうだが、しかし、あくまで本盤のメインはギター奏者の二人なわけで、そう考えれば、バードとマクリーンの出来が最高である必要はない(とはいえ、個人的には、1.「ブルー・デューク」、3.「ピヴォット」などの演奏は結構好きなのだけれど)。ちなみに、ドラム(アート・テイラー)とベース(ダグ・ワトキンス)もそれぞれ定評あるジャズメンだ。 そのようなわけで、『2 ギターズ』は、他のジャズ楽器のよさも楽しめつつ、ギターをメインに聴くことのできるアルバムに仕上がっていると言える。実際、4.「クローズ・ユア・アイズ」はバレルの、7.「アウト・オブ・ノーホエア」はレイニーがそれぞれメインのギター中心の演奏である。熱心なジャズ・ファンやジャズ入門書の類がここぞとばかり"ジャズの真髄"的な(あるいは彼らがそう思う?)盤を勧めるのに対して、もっと気楽に小さなきっかけがジャズを聴く始まりになってもいいと思う。そうした意味で、本盤は一つのきっかけになり得る1枚だと感じるし、筆者にとっては今でも好きなギター盤であり続けている。[収録曲]1. Blue Duke2. Dead Heat3. Pivot4. Close Your Eyes5. Little Melonae6. This Way7. Out Of Nowhere録音: 1957年3月5日Kenny Burrell (g, 7.除く)Jimmy Raney (g, 4.除く)Donald Byrd (ts, 4.と7.除く)Jackie McLean (as, 4.と7.除く)Mal Waldron (p)Doug Watkins (b)Arthur Taylor (ds)Prestige 7119 Kenny Burrell/Jimmy Raney ケニーバレル/ジミーレーン / 2 Guitars 輸入盤 【CD】 以下のブログランキングに参加しています。お時間の許す方は、 “ぽち”応援よろしくお願いします。 ↓ ↓ ↓