シェリー・マン 『ザ・ウエスト・コースト・サウンド(The West Coast Sound, Shelly Manne & His Men Volume 1)』
“西海岸っぽさ”が生かされた好演奏 タイトルの“ウエスト・コースト・サウンド”には定冠詞“ザ(The)”がついていて、“これぞ西海岸”と言わんばかりのタイトルになっているのが、このシェリー・マン(Shelly Manne)のリーダー作。シェリー・マンは、ニューヨークの生まれではあるものの、1950年代初頭に西海岸のLA郊外に移り、いわゆる“西海岸ジャズ”の中心的ドラマーとして活躍した。 とはいっても、何をもって“西海岸”的かというと、あまりはっきりした共通の答えはないのかもしれない。せいぜい共通理解の得られる範囲では“アレンジと軽妙さ”が“ウエスト・コースト”や“クール”といった用語で括られるジャズ音楽にある程度共通するといったところだろうか。仮にそうだとすれば、本盤はそのイメージにうまく合致している。 本盤の特徴は、とにかく豪華な7人編成による、3種類の異なるセッションの記録という点にある。リーダーのシェリー・マン以外に全曲に参加しているのは、ヴァルブ・トロンボーンのボブ・エネヴォルゼン、バリトン・サックスのジミー・ジュフリー。アルト・サックス、テナー・サックスは全曲に編成されているが、セッションごとに面子は異なり、ピアノとベースもちょっとずつ違っている。さらに、ジャケットには作曲・編曲者の名が連ねられており、とにかくいろんなメンバーが参加しているという印象である。目立ったところ(かつ筆者のお気に入り)では、マーティ・ペイチ(p, arr)、ラス・フリーマン(p)、アート・ペッパー(as)、バド・シャンク(as)、カーティス・カウンス(b)などといった具合の豪華メンバーである。 とはいえ、ただ軽妙なアレンジや演奏の曲が居並んでいるというわけでもない。軽いノリを見せたり、いくらか陰鬱な気分を出したり、よく言えば“押したり引いたり”のバランス感覚がいいというのが、この作品の特徴なのかもしれない(そしてそれは異なるセッションを組み合わせたところにも原因があるのかもしれない)。敢えて1曲だけ触れるならば、11.「ユーアー・マイ・スリル」のように、軽妙でありながら、ただそれだけではない演奏が随所で繰り広げられているというのが、個人的にはツボにはまってくる。ちなみに、これらセッションの成果は、少し後の『マイ・フェア・レディ』(1956年録音)にもつながり、アンドレ・プレヴィンとリロイ・ヴィネガーを迎えての同盤は好調な売れ行きを示すこととなった。[収録曲]1. Grasshopper2. La Mucura3. Summer Night4. Afrodesia5. You And The Night And The Music6. Gazelle7. Sweets8. Spring Is Here9. Mallets10. You're Getting To Be A Habit With Me11. You're My Thrill12. Fugue[パーソネル、録音]1., 3., 8., 10.: Shelly Manne (ds), Bob Enevoldsen (vtb), Joe Maini (as), Bill Holman (ts), Jimmy Giuffre (bs), Russ Freeman (p), Ralph Pena (b)1955年9月13日録音。2., 5., 6., 9.: Shelly Manne (ds), Bob Enevoldsen (vtb), Art Pepper (as), Bob Cooper (ts), Jimmy Giuffre (bs), Marty Paich (p), Curtis Counce (b)1953年4月6日録音。4., 7., 11., 12.: Shelly Manne (ds), Bob Enevoldsen (vtb), Bud Shank (as), Bob Cooper (ts), Jimmy Giuffre (bs), Marty Paich (p), Joe Mondragon (b)1953年7月20日録音。作曲、編曲:Bob Enevoldsen, Jimmy Giuffre, Bill Holman, Shelly Manne, Marty Paich, Shorty Rogers, Bill Russo 【楽天ブックスならいつでも送料無料】JAZZ THE BEST 122::ザ・ウエスト・コースト・サウンド [ シェリー・マン ]下記のブログランキングに参加しています。応援くださる方は、バナーをクリックお願いします! ↓ ↓