serial number「All My Sons」
serial number 「All My Sons」 作:アーサー・ミラー 翻訳・演出:詩森ろば 舞台美術:杉山至+鴉屋 照明:榊美香(有限会社アイズ) 音楽:鈴木光介 衣裳:西原梨恵 音響:青木タクヘイ(STAGE OFFICE) 映像:浦島啓(colore) 演出助手:和田沙緒理 翻訳監修:佐藤澄子 舞台監督:田中翼(capital inc.)/中原和彦 シアタートラム 開演13:00 <CAST> ケイト・ケラー……………………神野三鈴 クリス・ケラー……………………田島亮 アン・ディーバー…………………瀬戸さおり ジョージ・ディーバー……………金井勇太 ジム・ベイリス……………………杉木隆幸 スー・ベイリス……………………熊坂理恵子 フランク・デュビュイ……………酒巻誉洋 リディァ・デュビュイ……………浦浜アリサ バート………………………………田中誠人 ジョー・ケラー……………………大谷亮介 ★serial number website「All My Sons」公演ページ https://serialnumber.jp/allmysons.html 2011年上演の『みんな我が子』(ケラー夫妻=長塚京三・麻実れい)を理由は忘れましたが、チケットを購入しながら観に行かなかった(行けなかった?)ため、今回はそのリベンジ的意味でも期待を込めて劇場へ アーサー・ミラーの戯曲はいつでも機会があれば観たいと思っています。 舞台はケラー家(父ジョー、母ケイト、息子クリス)の庭。木製のテーブルと椅子の置いてあるデッキが”いかにもアメリカ”な邸宅。両隣の住人とのちょっとした社交場でもあるらしく、入れ替わり立ち替わり現れる登場人物たちの会話や態度から、それぞれの人物像や確執を含む関係性が見えてくる。まずは人間関係の図式を理解するところからスタート、という感じ。 ケラー夫妻にはもうひとりラリーという息子がいました。戦争で行方不明になり3年半。母ケイトは戦死を受け入れず帰還を待っています。ラリーの(かつての)恋人のアンを兄のクリスがプロポーズのためにニューヨークから呼び寄せます。アンの父スティーブはジョーの経営する軍需工場の共同経営者で、かつては家も隣で家族ぐるみの付き合いをする関係でした。近所の住人から軍需成金と陰口を言われるほどに裕福な暮らしのジョー、対するスティーブは監獄に収監される身……この境遇の差は?3年半前に飛行機の部品に欠陥が見つかるもそのまま軍に納品し、その結果パイロット21名が事故死……その罪で二人は逮捕されます。しかしジョーは無罪放免、スティーブは有罪になり、ディーバー家はこの土地から出て行きます。 そんないわくつきの関係にある家の娘が久しぶりに家にやってくる。どことなく動揺を隠せないケラー夫妻。とくにラリーの戦死を認めないケイトの混乱(錯乱と言ってもいいかも)ぶりは鬼気迫りました。息子の恋人が、もう一人の息子のクリスと結婚!?認められるわけがないじゃない!?それは戦死を認めるということでしょう!?(母親としての気持ちはわかるけど認めなよ〜) アンの兄であるジョージが来訪し、事件後に初めて面会した父スティーブから聞いた「事件の真相」を明らかにします。それまでは人間関係の説明的だった舞台に一気に緊迫感が増します。そして『戦地のラリーから送られた手紙』をアンがラリー夫妻に見せ、悲劇の結末に向かって話は急展開します。めっちゃキツい展開でした。ラストはたぶん……だろうなぁと予想した通り(銃社会のアメリカですから)ちなみに戯曲は未読で他劇団の上演も観たことありません。 そんなわけで初めて観た『All My Sons』でしたが、家族の幸せをだけ願い、事業で成功をおさめリッチになる……そんなアメリカンドリームの裏側にある利己主義、今で言えば「自国第一主義」でしょうか?そこから排除される人々を生んではいけないよなぁと思った次第です。構成する家族、近所の人々それぞれの抱える葛藤やバランスゲーム的に変化する関係性が面白かったです。あとは……原発問題や武器輸出入問題?にこじつけて、いつものように世界平和を願ったのでした。にほんブログ村