真夏の夜の夢
【東京芸術祭2020 東京芸術劇場30周年記念公演】 真夏の夜の夢 原作:ウィリアム・シェイクスピア(小田島雄志訳「夏の夜の夢」より) 潤色:野田秀樹 演出:シルヴィウ・プルカレーテ 舞台美術・照明・衣裳: ドラゴッシュ・ブハジャール 音楽:ヴァシル・シリー 映像:アンドラシュ・ランチ 音響:井上正弘 照明コーディネート:阿部康子 映像コーディネート:神守陽介 ヘアメイク:鎌田直樹 演出補:山田由梨 演出助手:𠮷中詩織 通訳:加藤リツ子 舞台監督:中村貴彦 和田健汰 技術監督:小林清隆 東京芸術劇場 プレイハウス 開演19:00 ★「真夏の夜の夢」公式サイト https://www.midsummer-nights-dream.com/ <出演> 鈴⽊杏……………………そぼろ(ヘレナ) 北乃きい…………………ときたまご(ハーミア) 加治将樹…………………板前デミ(ディミトーリアス) ⽮崎広……………………板前ライ(ライサンダー) 今井朋彦…………………メフィスト 加藤諒……………………タイテーニア ⻑⾕川朝晴………………氷屋 ⼭中崇……………………豆腐屋 河内⼤和…………………酒屋 ⼟屋佑壱…………………耳が悪い精 浜⽥学……………………年の精 茂⼿⽊桜⼦………………中居おてもと ⼋⽊光太郎………………あたしの精 吉⽥朋弘…………………目が悪い精 阿南健治…………………夏の精かしら 朝倉伸二…………………福助(ボトム) ⼿塚とおる………………パック 壤晴彦……………………オーベロン <STORY> 創業130年の割烹料理屋「ハナキン」。 その娘・ときたまご(ハーミア)【北乃きい】には許婚がいた。 板前のデミ(デミトリアス)【加治将樹】である。 デミはときたまごを愛していたが、彼女は板前のライ(ライサンダー)【矢崎広】に恋心を 寄せていた。 ときたまごとライは〈富士の麓〉の「知られざる森」(アーデンの森)へ駆け落ちする。 それを追いかけるのはデミと、彼に恋をしている娘・そぼろ(ヘレナ)【鈴木杏】。 森では妖精のオーベロンとタイテーニアが可愛い拾い子をめぐって喧嘩をしている。 オーベロンは媚薬を使ってタイテーニアに悪戯をしようと企み、妖精のパックに命令する。 ついでにそぼろに冷たくするデミにも媚薬を使おうと思いつく。 しかし悪魔メフィストフェレスが現れ、パックの役目を盗みとる。 そこに「ハナキン」に出入りしている業者の面々が結婚式の余興の稽古にやって来て、事態は てんやわんやに……。 シェイクスピアの『真夏の夜の夢』をベースに、創業130年の老舗割烹料理屋を舞台に繰り広げられる4人の若い男女の恋をめぐるドタバタ劇。役名のおふざけ具合から想像できるとおり、野田さんならではの「ダジャレ」=言葉遊びが随所に。でも演出はルーマニア人のシルヴィウ・プルカレーテ氏。野田氏がここ十年間で観た芝居のうち、最も衝撃を受けたのがプルカレーテ演出の『ファウスト』だったそう。 原作には登場しない悪魔メフィストがストーリーのキーマン的存在。恋のキューピッド役のパックを騙して閉じ込め、パックに成りすまし人間の欲望と憎しみを目覚めさせ、世界を混乱に陥れます。妖精たちの棲む森は大炎上。しかし、悪意と欲望を解き放ったそぼろによって世界は救われる……その姿にカタルシスを感じました。杏ちゃんの熱演はアスリートのようで、解放された魂がオーラになって見えるようでした(←大げさ)オーラといえば、背景の映像が綺麗でした。人が拡大や縮小する演出も面白かったです。映像を多用する見せ方はコロナ禍も影響しているのかしら。 終幕は演者が”素”の役者に戻る定番仕様。これ、好きなんですよね。今目の前で繰り広げられたことは、ぜ〜んぶ「真夏の夜の夢」……儚い。多くの登場人物(妖精?)が白塗りで奇抜なメイクを落としての再登場の中、「悪魔」メフィストの今井さんだけがそのままの姿なのが、何か比喩的。 いささか睡眠不足で万全の体調ではない中、夢と現を行ったり来たり(睡魔が襲ったという意味ではない)のノンストップの濃い2時間弱でした。観劇ってやっぱりイイにほんブログ村