「世界は一人」
パルコ・プロデュース 世界は一人 作・演出:岩井秀人 音楽:前野健太 舞台監督:谷澤拓巳 美術:秋山光洋 照明:佐藤啓 音響:大木裕介・藤森直樹 衣裳:伊賀大介 ヘアメイク:須賀元子 東京芸術劇場プレイハウス 開演19:00 <出演> 松尾スズキ/松たか子/松尾スズキ/瑛太 平田敦子/菅原永二/平原テツ/古川琴音 演奏:前野健太と世界は一人 [Vo,Gt.前野健太、B.種石幸也、Pf.佐山こうた、Drs.小宮山純平] <STORY> 海のそば、かつて炭鉱で栄えたが いまは寂れ切ってシャッター街となった地域に 生まれ育った同級生三人が、 成長し、家族とモメにモメ、 窃盗で捕まったり、自死を計ったり、 上手く立ち回って人生の罠から 逃れたりなどしつつ、東京へ出て成功したり 失敗しながら再び巡り会う、物語。 ※「世界は一人」PARCO STAGE 特設ページより転載★PARCO STAGE「世界は一人」特設ページ http://www.parco-play.com/web/play/sekai/ 岩井秀人氏。劇作家・演出家としても、俳優としても私の興味の範疇外でした。観劇前にざっとWikiで入れた予備知識から、おそらくは内省的な「自分探し」のメッセージが強い作品かな?と予想。あ、でもほぼフラットで真っさらな状態で臨みました。 物語を構築するメインの3人の人生模様をオリジナルの曲に乗せて描く音楽劇。 ヒロインの美子(松たか子)は裕福な家庭ながらも愛情に恵まれず、投身自殺未遂を起こしてしまいます。ボス的な存在だがのちに引きこもってしまう良平(瑛太)と、仲の良い両親の元で普通に育った心優しい吾郎(松尾スズキ)。小学校の林間学校で起きた「おねしょ事件」の顛末が、彼らのその後の人生に意外なほどに影響を与えます。 たかが「おねしょ」でも、大人の世界に置き換えれば交通事故か殺人を犯したくらいに大ショックなこと。「した」人は他の人に罪を被せて結局は自責の念にかられるし、気がついて教えてあげた人は板挟みになるし、謂れのない濡れ衣(まさに濡れた布団!)を被せられた人は人間不信になるし……されど「おねしょ」がその後の人生に与える影響が面白かったです。と同時にトラウマってこういうことだよなぁと怖くなったり。小学校時代の描写は、貧富の差、持つものと持たざるもの、支配する側される側……などなど、社会の縮図のよう。 一見幼なじみの仲良し3人組のようでいて、力関係の変化や歪みがそこかしこに見えてきます。 美子と吾郎は大人になって再会し結婚。娘(平田敦子)が生まれますが、子育てを巡り反発し合うように。娘は「外に出ると破裂する」病気らしく籠の鳥のような生活。良平(瑛太)と再会した吾郎(松尾スズキ)は、いまや立場が逆転した優越感から良平を家に招待します。良平の心に芽生える2人への復讐心……。林間学校のあの頃から、心なんて本当は通ってなかったのかな。 不幸とまでは言えないけれど、幸せじゃない。側に誰かがいるけれど、心は通わない。でも、思い出だけはいつもキラキラ輝いて綺麗に見えるんだよね。汚くても綺麗ってことにしたいよね。 観終わって感じるこの切なさは何なんだろう……。哀しさとも虚しさとも違う。 ※「世界は一人」のタイトルから来る先入観あるかも。 今回はチケット取りに出遅れて、最後列席での鑑賞で「途中で寝るかも…」と戦々恐々でしたが、なんのなんの。三者三様の人生の行方に引き込まれました。基本ミュージカルは好きじゃない(宝塚は除く)のですが、音楽の使い方が斬新でまったく苦になりませんでした。あえて言うなら前野健太さんたちがリズム隊で役者がメロディー担当な感じ?全ての感情を「歌」にするミュージカルとは違うストリート風の演奏が自然な感じで良かったです。にほんブログ村