カテゴリ:観念重視から事実重視への転換
お医者さんがガンを告知するかどうかは大変気を使われるそうだ。
直接告知すると患者さんがショックを受けて生きる気力を無くしてしまうからである。 現在は大分医療も進歩してきて、そうでもなくなってきたが、以前は、末期がんはガンの告知はすべきでないという医者が多かったようだ。 しかし、自分の症状がガンということを知らないで亡くなるということは弊害が多い。 告知をしないということは、森田理論でいえば事実と向き合わないで、事実を隠蔽するということである。 自分の症状の本態が分からなければ、ああでもない、こうでもないと考えて疑心暗鬼になってしまう。 そして痛みだけが強くなってくるので不安感がどんどん膨らんでいく。 そして患者同士の会話の中で自分はガンだと分かると、医師や家族に対する不信感が芽生えてくる。 反発するようになる。 体の不調の原因がガンであるという事実が分かるとメリットが多い。 伊丹仁朗医師によると、第一に、自分の意志で納得できる治療法を選択できる。 第二に治療、闘病に全力投入できること。 第三に家族、友人と隠し事なく心を通わせて闘病できることだと言われる。 実生活の利益としては、生きているあいだにぜひしたいことを実行するチャンスを逃がさずにすむし、もしもの場合にそなえて遺書を書くなど、現実的な対処ができるという。 Nさんはガンと知らないうちはタバコを吸っていた。妻はガンということができないから、タバコは免疫力を低下させると分かっていても、タバコをとめることができなかった。 告知をしないことはこのような不利益もあるのだ。 ガンという事実を突きつけられれば、いったんはまさか自分がガンになるなんてと思う。 次にショックを受けて悲嘆にくれる。どうして自分がこんな目に合わなければならないのかと思う。 そういう感情を十分に味わっていると次にどうするかという段階に移行することができる。 心が落ち着いて自分のなすべきことがはっきりしてくる。 事実に向きあわないと、そういうプロセスを踏まないので、意気消沈し、破れかぶれになって、ガンの進行を早めてしまうのである。 ただ告知にあたっては十分な配慮が必要だと伊丹医師は言われる。 医師にとって大事なのは患者が希望を失わないように援助することである。 患者本人がガンに対する精神的抵抗力を身につけたうえでガンと知ることが大切だと言われているのだ。 つまり機械的に告知をするのではなく患者を見て、患者への配慮も欠かせないと言われている。 例えばあなたはガンですと言わずに、「ここに腫瘍のようなものがある」 「現在の医療では決め手となる治療法がない」という言い方をすることもある。 こんな煮え切らないいい方でも、患者さんにとっては単純明快で歯切れがよいという場合もあるということです。 これは森田でいえば白か黒ではなく、グレーゾーンの告知ということだろうか。 (モンブランに立つ 平尾彩子 リヨン社 108ページ引用) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024.05.31 20:06:47
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