今日は神経症克服のために、4つ目の「現実や事実の受容手法」の説明をしてみたい。
森田理論で言えば「事実唯真」の話である。
事実唯真の反対は、 「かくあるべし」という理想主義的考え方のことをいう。
「かくあるべし」的考え方は、理想とかけ離れた事実を隠したり、ねじ曲げたりする。
そのことが、自分や自分の所属する組織を不安定にする。
また事実をごまかしていると、自分の思いとは反対に周りの人から信用されなくなってしまう。
葛藤や苦悩を抱え、ますます生きづらくなってくる。
このことを森田理論では「思想の矛盾」というのである。
最近社会問題となっている日大アメフト部の問題や政府がもみ消しに躍起になっている森友問題、加計問題などを見ていると、そのことがよくわかる。
私たちはこれらに学び、基本的には現実や事実を隠すことなくありのままに認めて行きたいものである。これらは森田理論学習を深耕することによって、能力として身に付けることができます。
まずはっきりさせておきたいことは、事実にはどんなものがあるかということである。
事実は次の4つに分けて考えると、わかりやすくなると思います。
1 、自然にわき起こってくる感情がある。
これは雨が降ったり、地震が起きたりする自然現象と同じです。私たちに意思の自由はありません。
ですから、裏を返せばどんなに嫌な感情であっても責任を取る必要はありません。
2 、自分の容姿、性格、素質、能力などがあります。
また、自分の欠点、弱点、自分が引き起こしたミス、失敗、過失などがあります。
これらは自分にないものを探すよりも、持っているものを活かしていくことが大切です。
また隠したりしないで事実をありのままに開示することが大切です。
3 、自分に対する他人の理不尽な仕打ちです。
その事実に対しては、状況をよく把握することが大切です。
他人の容姿、性格、素質、能力、欠点、弱点、ミス、失敗、過失などについては、安易に批判しないで、その事実を正確に把握するにとどめることが大切です。
4 、台風、地震、火山活動などの自然災害、経済的な危機、紛争、伝染病の蔓延などです。
できるだけの事前の準備をしておく事は大切ですが、どうにもならないことは、最終的には受け入れていくしか手の打ちようがありません。
それでは次に、事実本位の生活を維持するために大切なことを説明します。
1 、事実を自分の感情を入れないでよく観察するということです。
我々は自分の周りに起こった出来事を、よく観察もしないで、今までの経験をもとにして、先入観を持って決めつけてしまいがちです。
それに基づいて行動を起こすので、とんでもない間違いを起こしてしまうのです。
完全に事実を把握することはできませんが、できるだけ事実に近づこうとする態度が大切なのです。
2 、私たち人間は都合の悪い事実を隠しがちです。
事実を公表するのを遅らせる。ありもしない事実を捏造したりします。
これらは自分と自分の所属する組織を守ろうとしているのですが、結果は周りの人からますます非難されたり軽蔑されるようになります。事実を受け入れるという姿勢を身に着けることが大切です。
事実は、なるべく早く公開する。具体的に話をする。包み隠さず赤裸々に話をすることが大切です。
事実の公開を遅らせる。抽象的な話をする。言い訳をする。ごまかす。責任転嫁をする。
などということはご法度です。
3 、起きてしまった事実について、自分勝手な是非善悪の価値判断をしない。
価値判断は、時間とともに変わっていくものですし、 10人の人がいれば10人の価値判断があります。
価値判断は絶対というものではありません。あやふやなものなのです。
自分の価値判断に固執して、自分や他人に押し付けることは百害あって一利なしです。
自分の価値判断に基づいて、相手を説教、批判、禁止、叱責、怒り、指示、命令していると、人間関係は悪化してきます。起きてしまった事実の原因究明をすることが、まず先に来なければなりません。
4 、森田理論学習では、事実本位の生活をするために、「純な心」「私メッセージ」の活用をオススメしています。
「純な心」は、自分の最初にわき起こった感情を思い出して、生活の中で応用していくことです。
最初に沸き起こる感情は、すぐに「かくあるべし」を含んだ感情で塗り換えられてしまいますので、意識して取り組まないと、自分のものにはなりません。獲得のためにはグループ学習が効果的です。
「純な心」の体得のための具体例は、何度もこのブログで紹介して行いますのでご覧ください。
「私メッセージ」は、他人と話をする時、「あなたは・・・」から始めるのではなく、「私は・ ・ ・と思う」「私には・ ・ ・こう感じられた」と言うように、私を主語にして話す習慣を作り上げることです。この能力が獲得できれば、事実本位の生活態度に近づいてきます。