図書館で『今夜も眠れない』という本を、手にしたのです。
ぱらぱらとめくると・・・
モノクロの挿絵が多いのです。
開高健の説くお話しもさることながら、挿絵が借りる決め手になったのです。
【今夜も眠れない】
開高健著、角川書店、1985年刊
<「BOOK」データベース>より
古書につきデータなし
<読む前の大使寸評>
ぱらぱらとめくると・・・
モノクロの挿絵が多いのです。
開高健の説くお話しもさることながら、挿絵が借りる決め手になったのです。
amazon今夜も眠れない
|
旅行バト
「第8章 特選ナチュラリスト文学」で 旅行バトの最後を、見てみましょう。
p227~229
教授:君が集めてくれた本を見て、うれしかったな。『ソロモンの指環』などという本が、いまだに売られているというのを知って楽しかった。文庫ではなくハードカバーでも売られ続けているというのを発見して、ほのぼのとした。この出版社のスパイ小説に、私は身銭を切って莫大な金を払い続けているけど、遥かなる敬意を送りたい。
助手:自然に関する本を集めるのは、かなり難儀なものですね。版元に品切れ絶版が多くて、本屋さんに残ってないか、何軒も探し歩かなければならない。
教授:辛いね。こういう、心なごむ本をどんどん出して欲しい。タフだ、優しさだとばかりいってないで。
助手:これだけ自然ブームで、バードウォッチングだ、森林浴だ、ビー・パルだ、自然を守れと言っていながら、こういう本がない、読まれないというのは、どういうことなんですかね。まず、自然を知り、自然界の動植物を知るということがないと、保護だ何だといっても始まらないでしょうに。
教授:そうです。自然の保護については、アメリカ人のほうがよっぽど熱心です。もっとも、無くなってから気づくんですけどね。かつてアメリカもめちゃくちゃをやった。大西部を埋めつくしていたバイソンが最後には何十頭になって、これはいかんというので回復にかかった。国立公園を指定し保護して、いまやっと何百頭か何千頭というところまで戻ってきた。ところがその前に、旅行バトというハトが絶滅させられてる。学名をエクトピステス・ミグラトリスというんです。シンシナティの動物園で最後の一羽が息を引きとった時間まで分かっている。
オーデュボンが書いているけれども、ミズーリのあたりを旅行していると産卵のために渡って来る旅行バトのために、何日も何日も空がまっ黒で、羽音を聞いているうちに眠くなったというの。それこそ一群れ何千万羽という数だったわけだけど、1羽が1個しか卵を産まない鳥だった。それにもう一つ付け足すと、肉がうまかった。
それで霞網で一網打尽。最後には大砲を散弾銃にしたやつもいて、餌をついばんでいる群れに榴散弾を叩き込んだんや。何千羽も一度に殺して、1羽2セント半という安値で売られた。大丈夫だよ、まだあんなにいるんだから、と言っているうちにとうとういなくなってしまったわけや。
たいてい、動物の種族が絶滅するときは、いつの間にかいなくなっちゃったということになるんやが、このハトは例外で最後の1羽がわかっている。肉がうまいとやられるね。旅行バトにしろ、バイソンにしろ。
助手:大地が広大で人間が少ないからですか、そんなバカな獲り方するのは。
|
『今夜も眠れない』2:第6章 特選SF小説
『今夜も眠れない』1:第1章 特選スパイ小説