図書館で『柴田元幸の意見100』という本を、手にしたのです。
おお 翻訳に関する100の意見てか・・・大使のツボが疼くのでおます♪
【柴田元幸の意見100】
柴田元幸著、株式会社アルク、2020年刊
<「BOOK」データベース >より
近現代の英米文学作品を、独自の視点で選び抜いて翻訳し、日本の読書界を動かしている翻訳家・柴田元幸が、翻訳に対する考え方や自身の翻訳手法について述べたとっておきの100の言葉(と、なぜか本人のボケツッコミ)を集めた一冊。東京大学での翻訳の授業や、講演、対談、インタビューなど、さまざまなシーンのシバタセンセイが登場。柴田訳のファン、翻訳に興味のある方、英語を勉強中の方、言葉について考えるのが好きな方、そして、なぜだかこの本を手に取ってしまったあなた。-どなたにもおすすめの一冊です。
<読む前の大使寸評>
おお 翻訳に関する100の意見てか・・・大使のツボが疼くのでおます♪
rakuten柴田元幸の意見100
|
ラテン語と英語の関係が述べられているので、見てみましょう。
p114~115
<48 漢語と和語のせめぎ合い>
漢語と和語のせめぎ合いという問題は、現代の翻訳でも、少なくとも英語の翻訳に関する限り変わっていません。
英語は種に二つの言語から成り立っていて、ブリテン島でもともと使われていたシンプルなアングロサクソン語がまずあって、そこに征服民族のラテン語、フランス語が入ってくる。たとえば「得る」はアングロサクソン系の英語だとgetですが、ラテン語起源の語ではobtainとかaquireなどがある。
この対比は、大和言葉と漢語の対比とほぼ同じだと思います。だから、英語から翻訳する時に、getやhaveだったら「得る」「持つ」ですが、aquireだったら「獲得する」、possessだったら「所有する」と訳し分ける。
もちろん文脈でいくらでも変わってきますが、そういう原則はしっかりあるべきです。案外問題にされないことですが。
|
翻訳するスピードを、見てみましょう。
p138~139
<59 読むスピードで訳す>
(翻訳するスピードは)意識して速くあろうともしているんです。ゆっくり訳すとどうしてもセンテンス単位で訳してしまうけれど、読者は文章の流れで読むわけだから、個々のセンテンスが自己完結していてはダメなんです。読むときの感覚、ノリを訳文で再現するためにも速く訳すべきで、速いから雑ということではないですよ。
|
村上春樹さんの凄さが述べられているので、見てみましょう。
p198~199
<87 外国語で書き始める>
ご存知の方も多いと思いますが、村上春樹さんも第1作『風の歌を聴け』の最初の数ページを英語で書いていました。
まだ『風の歌を聴け』というタイトルも付いていなかった時点で、生まれて初めて小説を書いてみたはいいが、いかにも日本文学という感じがして嫌だなあと思った村上さんは、オリベッティのタイプライターを引っぱり出してきて、書き出しの数ページを英語で書いてみた。そうすると、凝った表現を使えず、シンプルに語らざるをえない。
それで日本文学臭さを抜くことができて、自分のスタイルに行き着くことができたと村上さんは言っています。二葉亭が1880年代にやったことを、村上さんは1970年代にやっていた。
二人とも、彼らから見て手垢の付いたスタイルから逃れようというときに、まず外国語で自分の文章を書いてみることを始めたというのは興味深いことだと思います。
|
『柴田元幸の意見100』2:「!」やコロンについて
『柴田元幸の意見100』1:翻訳の勘所
()