季刊マンガ誌「COMICばく」が刊行されていた当時、この雑誌を見たことはなかったのだが、つげ義春をメインに据えた純文芸誌的スタンスがいいではないか♪
・・・ということで以下のとおり復刻して読み直してみましょう。
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図書館で『「COMICばく」とつげ義春』という本を、手にしたのです。
マンガ界における純文芸誌ってか・・・執筆者につげ兄弟、杉浦日向子、林静一らのビッグネームも見える凄い雑誌やないけ♪
ほとんど独力で、この雑誌を出版した著者も凄いけど。
【「COMICばく」とつげ義春】
夜久弘著、ベネッセコ-ポレ-ション、1989年刊
<「BOOK」データベース>より
1984年に創刊され、87年までの4年間に15号刊行された季刊マンガ誌「COMICばく」は、強烈な個性をもった作家をずらりと並べた〈マンガ界における純文芸誌〉として、熱狂的ファンの支持をうけた。その「COMICばく」の看板ともいえたのがつげ義春で、寡作をもって鳴る彼が毎号(!)作品を発表するということ自体、重大事件と呼んでも決しておおげさではなかった。本書は、ほとんど独力で雑誌を作りつづけた著者が、創刊からやむなく休刊にいたるまでの迂余曲折を綴った、「もうひとつのマンガ史」である。
<読む前の大使寸評>
マンガ界における純文芸誌ってか・・・執筆者につげ兄弟、杉浦日向子、林静一らのビッグネームも見える凄い雑誌やないけ♪
ほとんど独力で、この雑誌を出版した著者も凄いけど。
rakuten「COMICばく」とつげ義春
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『ばく』最終号あたりを、見てみましょう。
p206~210
<ついにギブアップ>
1987年9月18日、ぼくはつげ義春と調布の深大寺にいた。
『ばく』最終号に掲載するためのインタビューを行なうためだった。つげ義春は3ヶ月前に14号に掲載する原稿を手渡し、ギブアップを宣言していた。
「今までなら、不安神経症で自分が悩んでいても、女房は夜久さんと同じで原稿描け描けと尻を叩くんだけど、今は休めっていってるんですよ。今回はそれぐらい症状が重いのね」
ぼくは奥さんにならったわけではなかったが、もう引き留めようとは思わなかった。『ばく』を出すことに、ぼく自身も疑問をもちはじめていたところだった。
つげ義春は終始『ばく』に苦しみつづけていた。日本文芸社も『ばく』の存在が重荷になっていた。そしてぼくもはっきりいえば苦しかった。みんなそれぞれの立場で懸命になって苦しんでいたのだ。
もうみんな苦しみから解放されてもいいんじゃないだろうか、そういう時期に来ているんじゃないだろうか、ぼくはそう思った。
2時間余にわたるインタビューを終えて、つげ義春とぼくは駅へ向かった。
「終わりましたね」
「そうね」
そんなことばをかわして、ぼくらは、ただ黙々と歩きつづけた。
<夢の終わり>
ぼくは、最終号の編集後記を次のようにしめくくった。
☆…空を飛ぶ夢をよく見ます。小高い丘のような場所から、地を蹴って体を水平にすると、ふんわりと自分が宙に浮くのです。意志を働かせれば、思い通りに中空を遊泳できます。無重力、浮遊感を味わうのはなかなかの快感です。
ときどき恐いことが起こります。いつのまにか自分はとてつもなく高所に舞い上がっているのです。こんなところから落下したら、ひとたまりもないぞ、思うと同時に自分の体は地上に向かって急降下を始めています。ビルや道路や樹木がどんどん大きくなって眼の前に迫ってきます。ああっ! ぼくは声にならない声をあげ、8割がた観念をする。残りの2割に現実の意識が入りこむ。「これは夢なんだ、やがて覚めてしまう夢なんだ」…と。
(中略)
☆…街を歩けば、あちらこちらにその日に発売されたマンガ誌が捨てられています。ぼくの女房がいいました。「マンガ誌なんて、ああやって読み捨てにして惜しくない値段、だからマンガ誌なのよ」たぶん、それは現実に見合った正解なのだろう。だとすれば、正反対の条件を持ち合わせた『ばく』の苦戦は自明の理で、敢えて存在を世に問うこともなかったのかもしれない
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『ばく』最終号について、くだんのフォームで紹介します。
【『COMICばく』第15号休刊最終号】
季刊雑誌、日本文芸社、1987年
<ヤフオク☆おすすめポイント>より
『COMICばく』は1984年から1987年までの4年間に、わずか15号巻のみ刊行された伝説の季刊マンガ誌の最終号です。
強烈な個性をもったガロ系作家をずらりと並べ、マンガ界における純文芸誌として、熱狂的ファンの支持をうけた漫画雑誌で、こちらは休刊となる最終号となります。
最終第15号には、創刊のきっかけともなったつげ義春先生の希少な写真付きロングインタビューが掲載されております。
発行部数も限られたシュールでコアな漫画誌の最期の発刊部ですので、お探しの方にオススメの一冊です。
<読む前の大使寸評>
【ご注意】ヤフオクは1987円で終了しています。
yahoo『COMICばく』第15号休刊最終号
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『「COMICばく」とつげ義春』1:杉浦日向子の登場
『「COMICばく」とつげ義春』2:「石を売る」の原稿を受けとった
『「COMICばく」とつげ義春』3:在庫はゼロになったけど