図書館に予約していた『ウマは走るヒトはコケる』という新書を、待つこと40日ほどでゲットしたのです。
なんか、力学とか流体力学とかも引用しながら説明する箇所があって・・・これまでよりハード志向であり、読むほうにも覚悟が求められているようです。
【ウマは走るヒトはコケる】
本川達雄著、 中央公論新社、2024年刊
<「BOOK」データベース>より
背骨と手足を得て、脊椎動物は速く長距離を移動できるようになった。走る、泳ぐ、飛ぶと方法は異なるが、動物それぞれが素早い動きを可能にする体のデザインを持っている。ヒトはコケつつ歩くが、これがめっぽう効率が良くて速い。なぜ?鶏の胸肉はササミよりも3倍も大きい。なぜ?渡り鳥が無着陸で何千kmも飛べる。なぜ?魚やイルカには顎がない。なぜ?皆、納得のいく理由がある。動くための驚きの仕組みが満載!
<読む前の大使寸評>
なんか、力学とか流体力学とかも引用しながら説明する箇所があって・・・これまでよりハード志向であり、読むほうにも覚悟が求められているようです。
<図書館予約:(3/31予約、副本1、予約5)>
rakutenウマは走るヒトはコケる |
「第2章 歩く力・走る力」あたりを見てみましょう。
p50~52
<ヒトの2足歩行―ヒトはコケながら歩く>
■ヒト、恐竜、鳥
ヒトは立ち上がって2足歩行をするようになった。2足歩行の利点として次のようなものが考えられるだろう。①手が自由になった。②高い位置から見晴らせるようになった。③脳を重くしても、真っ直ぐに経っていてその真上に脳が乗っているので、支えるのが楽。④2足でしか立っていないので体が不安定になるが、その不安定さを利用して、歩くエネルギーを節約している。⑤直射日光が当たる面積が小さくなり過熱が防げ、また体が地面から離れているため、暑さ寒さの影響を受けにくい。
2足歩行をしているものには、ヒトの他に恐竜とその子孫である鳥がいる。ただし彼らはバランスの取り方がヒトとは違う。恐竜は永くて太い尻尾をもち、胴も尾もともに水平に保ちながら、重心のある位置あたりから肢を垂直に下ろして立っていたとされる。これはT字のやじろべえの姿勢であり、バランスのとれた安定した姿勢である。
鳥の場合は体を軽くするために長い尻尾を失ったし、飛ぶための強大な筋肉を胸のところにもった。そのため体の重心は股関節よりずっと前に移動した。それでもやじろべえ方式で立つために、大腿骨を水平にして前に向け、膝をほぼ重心の位置までもってきて、その位置で膝を曲げて脛(すね)から先を垂直に下ろした。鳥の肢は一見、われわれのものとは逆向きに膝関節が曲がっているように見えるが、あれは不座ではなくくるぶしの関節である。
鳥も恐竜もやじろべえ方式の安定した姿勢を保っているが、ヒトの場合は胴を垂直に立ててしまったため、トップヘビーの極端に不安定な姿勢になった。その点を逆手にとって省エネしているというのが、ここからの話題である。
■胴の形
四肢動物は2つのやじろべえが前後に並んだものと見ることもできる。1つのやじろべえは、頭+「胴の前半分」の水平の棒が、真ん中で前肢に支えられているもの、もう1つは、「胴の後半分」+尻尾の水平の棒が後肢で支えられているやじろべえ。やじろべえだから体が安定する。
さらに頭と胴が釣り合い、また胴と尻尾が釣り合っているのだから、重力で頭や胴が垂れ下がらないようにと筋肉で持ち上げ続ける必要がなくなり、省エネになる。とくに胴は重いものだから、陸の大型動物は胴が真ん中で垂れ下がらないように工夫しなければならず、これが工夫の一つである。
ここで胴の形について考えておきたい。胴はおおまかに見れば前後に長い円柱形だが、断面の形は動物群ごとに違う。魚でもよく泳ぐものたちの胴の断面は幅が狭く背腹に長い楕円形であり、これは胴のくねりで水を押す面積をおおきくしていると解釈できる。
四肢動物の胴でも断面は背腹が少々長い楕円形である。重力で前後の肢の間の腹が垂れ下がらないように脊柱をアーチ状に上に凸にし、脊柱から内臓を吊り下げた。このため横幅より背腹の方が長い。胴は建築学的に見れば梁である。梁とは水平方向の支持材のことで、垂直方向の支持材が柱。胴を梁、肢を柱と観ることができる。梁は重力のかかる方向が厚い方が下にたわみにくい。だから胴も四肢動物のように背腹方向に厚い方が力学的に強くて重力で胴が垂れ下がりにくい。
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『ウマは走るヒトはコケる』1:ウニの歩行