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カテゴリ:美術・芸術・博物鑑賞
きょうは、神戸・元町の大丸ミュージアムで行われている「上村松篁展」を見てきました。 上村松篁(しょうこう)は、美人画で有名な画家、上村松園の息子で、親子2代にわたって文化勲章を取った人です。 ただ、親子で絵の作風はまったく異なり、母の松園は美人画、息子の松篁は花鳥画がメインです。 私はほんの2年ほど前まで、松園の絵を除いては日本画自体にまったく興味がありませんでした。 ところが、うちにせっかく床の間があるので、‘とりあえず’安いものでいいから飾る掛軸がほしいなと思ったときに、松園の息子が著名な花鳥画家であったことを思い出し、もみじの木に小鳥が止まっている絵の掛軸を購入しました。(もちろん、松篁の作品ではありません・・・。(^-^;)) それがことのほか気に入ったので、次々といろいろな季節のいろいろな構図の掛軸を購入していくうちに、日本画(とりわけ花鳥画)に興味を持つようになったのです。 大丸ミュージアムは梅田は年に1回程度、心斎橋は数年に1度訪れますが、神戸は記憶にありません。 でも、行ってみると、梅田と違って、入ってすぐのところにちゃんとコインロッカーがありました。 会場に入ってすぐのところに19歳のときの作品『閑庭迎秋』があるのですが、いきなりその大きさと描写に圧倒されました。 最初の2点は仰々しいガラスの中に展示されているので、近くで見ることはできませんが、そのあとしばらくは、額の近くまで顔を近づけて見ることができます。 しかも、何作かは額にガラス(アクリル)がはめられていないので、何にもさえぎられることなく、筆遣いなどの細部までしっかりと見ることができました。 要所要所に適度な説明があり、松篁の画業・変遷を知らない人にも十分に理解できるようになっていました。 ただ、残念なのは、展示スペースの関係だと思うのですが、作品が年代順に並んでいないこと。 全体的には若い頃から晩年へと並べられているのですが、特に脂の乗った時期の作品が年代順になっていませんでした。 最初のほうから作品に圧倒され、『椿』『春園鳥語』『春雨』といった作品を間近で見ているうちに、画集では味わえないものがこみ上げてきました。 『春雨』の寝転がって恨めしそうに外を見ている女の子の着物はまさに母松園譲りの描写力でした。 そして、何かがこみ上げてくる感覚のまま先へ進んでさらに作品を見ていくうち、今までに感じたことのない種類の感激と感動で涙があふれてきました。 見えない様子(・・・風が画面左側から吹いている)を窺(うかが)わせるように描いてある『鳥影趁春風(ちょうえいはるかぜをおう)』、一見構図が悪いように感じられる『鴛鴦(おしどり)』は画面に奥行を出すためにわざと手前半分は水面だけにしてあるなど、洋画とは異なる技術が用いられていることもわかりました。 (ドラロッシュの『塔の中の子どもたち』などはこの前者には当てはまりますね。) 最後は97歳の時の作品『春愁』で締めくくられていました。 後半3分の1あたりから、何か作品の雰囲気が変わったなぁ・・・と思ったのですが、よくわからないまましばらく見ていくうち、ある作品でふと説明パネルを見てみると、初めのほうは絹本彩色だったのに、いつのまにか紙本彩色になっています。 そして、背景の色は付けたものではなく、もともと金や銀の色の紙を用いて描いていました。 岩絵の具の吸い方がやはり絹と紙ではまったく違うようで、それが私が絵の雰囲気が変わったと感じた原因だったようです。 恐ろしいほどに見ごたえのある展覧会で、作品の数が50余りなのに、たっぷり1時間半かかりました。 半分ほど見終わったところでふと考えたのですが、おととしの秋に奈良の松伯美術館で行われた「上村松園展」で松園の作品を見たときでさえ、これほどの感動はありませんでした。 私の中で、松篁が松園に肩を並べたように思われました。 数日前にヨーロッパから帰って来て、まさに「しつこい洋食ばかり食べて胃がもたれ気味だったところに、ひさしぶりにあっさりした純粋な日本料理を食べて生き返った」ような感覚でした。 去るのが惜しいような感覚で会場を出ました。 そして、「これほど図録がほしいと思った展覧会はない! 図録と絵葉書を買って帰ろう」と思って、グッズ売り場へ進みました。 ところが、なんと残念なことに、今回の展覧会は「図録」が発行されていないのです! せっかくこれほどの感動を受けた展覧会なのに、家に帰ってから、もう一度絵を見ることができないのはとても寂しく思いました。 絵葉書は何種類かあったし、また、松伯美術館のミュージアム・グッズの色紙絵が何作かあったので、それらは結構買い込みました。 そのあと、偶然、大丸の中で会った両親と、レストランフロアーへ行き、会席御膳を食べて、帰りました。 日本文化にどっぷりと浸った(^-^;)1日になりました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007年02月17日 01時06分13秒
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