|
カテゴリ:民法
第5章 履行後の問題点その2 ------------------------------------------------------------ ------------------------------------------------------------ 壷にひびが無く、きれいな壷を清水君に引き渡したとします。 しかし、その後でもまだまだ問題は発生しうるのです。 もし、その壷が三島さんの物ではなく、三島さんはただその壷を預かっていただけで、他人(ここでは蒲原達樹としましょう)の物だったらどうなるのでしょうか。 もちろん、三島さんは清水君を騙している場合が多いでしょうから、詐欺(96条)になることが多いです。 しかし、詐欺の場合は契約が取り消せるだけで、それ以外のことはできません。 つまり、96条を使っても壷は返さなくてはならないのです。 この場合、清水君は壷を手に入れられないのでしょうか。 実は壷を手に入れられる場合があるのです。 (即時取得) 第百九十二条 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。 普通の売買は「平穏に、かつ公然と」行われますから、ここは無視して良いでしょう。 「占有」とは、実際に物を手に入れていることを言います。 「動産」とは不動産で無いもの全般をいいます。 善意であり、かつ、過失がないときとは、他人の物であるとは知らなかったし、知らないことについて過失も無かったことを言います。 そう、「善意」とは「知らなかったこと」を言います。 「良かれと思って」と言う意味ではありません。 日常用語とは違うのでご注意ください。 ちなみに、知っていた場合は「悪意」といいます。 売買においてその物が売主のものであると思い込んでいるのが普通ですから、他人物であることを知らなければ過失もないと言っていいでしょう。 つまり、動産の普通の売買で他人物をつかまされたとしても、そのことを知らなかった場合には、買主が権利者となるのです。 これを「即時取得」といいます。 では、もう一度即時取得の要件についてまとめてみましょう。 1、動産であること (=不動産でないこと) 2、売買などの取引行為によって占有をすること (=売買などで物を手に入れること) 3、相手方が無権利者であること (*相手方が無権利者でなければ通常の売買です) 4、平穏・公然・善意・無過失であること ということは、清水君は壷が蒲原の物であると知らなかった場合、清水君は壷の権利者となり、蒲原から「壷を返せ」と言われても返す必要はありません。 みなさんも安心して売買をしましょう。 ところが、実は例外があるのです。 ------------------------------------------------------------ さてさて、たとえ壷が第三者(例えば、草薙充)のものであっても、条件を満たせば清水君は壷を手に入れられると先ほど申し上げました。 しかし、これには例外があります。 それは壷が盗品・忘れ物・落し物だった場合です。 条文を見てみましょう。 (盗品又は遺失物の回復) 第百九十三条 前条の場合において(引用者注・192条「即時取得」のこと)、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から二年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。 「遺失物」というのは忘れ物、落し物のことです。 「占有物」というのは、売買等で売られた物、つまりここでは壷を言います。 「被害者又ハ遺失主」というのは文字通り盗みの被害者又は忘れ物・落し物をした人をいいます。 ここでは草薙充のことをさします。 つまり、本件で壷が盗品だったり、落し物だったりした場合は清水君は草薙充から「返せ」と言われたら返さなくてはなりません。 これは、壷が盗まれて、それが売られてた場合、盗まれた人(草薙充)は落ち度が小さいからなのです。 昨日の192条の場合は、勝手に売ってしまうような三島さんに壷を預けたと言う点で草薙充に落ち度があります。 しかし、今日のお話の場合、草薙は自ら管理していて盗まれたのです。この場合、192条に比べて落ち度は小さいと言えるでしょう。 そこで、即時取得の条件がそろっていても、物が盗品や遺失物だった場合には取り返されてしまうのです。 ですから、フリーマーケットや、インターネットオークションで落札するときはできる限り注意してください。 これからも応援してくださる方は、下記のリンクをクリックしてください。 人気blogランキング お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年12月06日 22時40分35秒
[民法] カテゴリの最新記事
|