テーマ:呪術廻戦(325)
カテゴリ:呪術廻戦
pixivからの再録です。
pixiv同様、時系列バラバラですみません。 この話は主人公が学校に復学した後の設定となっております。 「呪術廻戦」をご存知ない方の為の予備知識。 ・呪術高専:呪術師の卵達が学ぶ高等専門学校。 東京の外れ(山ん中?)にある。たぶん4年制。 ・虎杖悠仁(いたどりゆうじ):原作主人公。高1。 呪いの王こと両面宿儺の指を食って、宿儺に呪われた厄介な子。 マズくても食うあたり、味覚も常識も大丈夫?ついでに胃袋も。 誰からも好かれる明るい性格の良い子。(体力馬鹿っぽい) ・両面宿儺(りょうめんすくな):呪いの王。手が4本(指は20)ある。 手指バラバラに封印され、そのうち数本を虎杖にゴックンされ、 今は虎杖の腹の中。時々乗っ取ったりして出てくる。 では、どうぞ。 〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜 ・ 〜 虎杖悠仁は、ひとり“秘密の部屋”に来ていた。両面宿儺によって“死亡”したこととしてその生存を隠されていた時、五条先生との修行でDVDを観ていた部屋だ。 あの後、なんだかんだあったが修行は及第点を貰い、学校にも復帰。同級生の伏黒や釘崎と感動?の再会(蹴られたり殴られたり、泣かれそうになったり)もしたし、先輩達ともやっと会うことができた(なんとパンダがいた!)。もうここで隠れて過ごす必要は無くなったのである。 だが、呪骸を抱えてひたすら映画を観るだけの生活を続けたり、その後任務で知り合った吉野順平と映画の話で意気投合したりするうちに、悠仁自身も徐々に映画が好きになってきていた。それで、時々こうしてこの部屋に来ては、ひとり静かに鑑賞していた。過去の悲しかったこと・怖かったこと、これから起こるであろう不安なこともこの時間だけは忘れて、映画に没頭することが彼の楽しみのひとつに加わった。 その日、悠仁は、ある戦争映画を観ていた。特に興味があった訳では無いが、レンタルショップでたまたま修行中に見た作品の隣に置いてあったので、借りてきたのだ。 1980年代に大ヒットしたアメリカ映画で、アカデミー賞をはじめ数々の賞を受賞している。名門大学に通う白人青年が、貧しい者達ばかりが戦争に送られる現実に憤り、反対を押し切って自らも志願して兵隊となる。だが、送られた先はベトナムの激戦地で、死と隣り合わせの過酷な日々に主人公はすぐに後悔。やがて少しずつ戦争や環境に慣れていく青年だったが、二人の上官の対立と死を見るうち、本当の敵とは何か、戦場とは戦争とは何かを考えていく・・・という物語だ。 話が中盤に入り、戦闘が激化し主人公達がピンチに陥る中、上官のひとりがもうひとりの裏切りによって窮地に立たされる。息を飲んで画面を見つめる悠仁の耳に、不意に聞き逃しそうなつぶやきが届いた。 「愚かなことよ」 「?」 「人とは、いつの世もなんと愚かなことか」 悠仁の中の宿儺だ。呪いの中でも最上級とされる特級に分類される呪霊で、「呪いの王」と呼ばれている。封じられた20本の指のうち数本を悠仁が文字通り“呑み込んだ”せいで、現在は悠仁の中に“棲んで”いる。普段はいるのかいないのかわからないくらい静かにしているが、こうして話しかけてくるということは、悠仁を通して映画を見聞きしていたのだろうか。 「弱き者があのように集まったところで、無力には変わらぬ。兎の群れは所詮兎、獅子には叶わぬように、力も持たぬ者が群れたとて為す術など無かろう」 映画は進む。危うく全滅しかけた主人公の所属する部隊は、ヘリコプターで別の戦地に移動することになる。 「でもさ・・・なんだっけ?ほら、窮鼠猫を噛むとかさ、追い詰められたらビックリするような力を出すことだってあるんじゃね?」 悠仁は反論を試みる。“愚か”だなんて言われて、人間代表として黙ってはいられない。 「武器だってどんどん進化してるし。銃だって爆弾だってあるんだぜ。弱い奴だって銃とか使えば・・・」 「それがまた愚かだと言うのだ」 主人公の乗ったヘリが空に浮かぶ。だが、味方だったはずの男によって怪我を負い、敵に囲まれ追い詰められた上官は地上に取り残されたままだ。 「あの男もそうだ。今まさに仲間に殺されようとしている。己の一瞬の甘さと弱さで。武器など持っていても何の役にも立たぬ」 ヘリは無情にも上官を残し去っていく。自分の死を悟った上官が、両手を挙げ空を仰ぐ。DVDのパッケージにもなっている、有名なシーンだ。 「呪いもまた然り。どれだけ小僧達が力を得たところで、俺には勝てぬ」 「そんなんやってみなきゃ・・・!」 「まぁ好きなだけ足掻くが良い」 「退屈させてくれるなよ」 悠仁が次の言葉を探しているうちに、宿儺の気配が途絶えた。 「なんだよ、アイツ」 言いたいだけ言って消えた呪いの王に、悠仁が不満を呟く。 映画はもうすぐエンディングを迎えようとしている。ようやく救援のヘリが現れ、主人公の青年は戦場を後にする。生き残った自分は何ができるか、何をしなければいけないか? 悠仁は、そこに自分の姿を重ねた。呪霊や宿儺によって死にかけた、いや、実際に一度死んでいる自分。祖父の遺言から辿り着いた言葉「正しい死」への道のりで、自分に何ができるのか、何をしなければいけないのか。 宿儺よ、見ているがいい。たとえ愚かだと言われようと、自分は自分の決めた道を生きる。自分と誰かのために持てる力の全てを使って。 暗く静かになった画面を見つめながら、悠仁は自分の心に改めて誓うのだった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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