カテゴリ:診療
機能性低血糖症って知っていますか?
来院された患者さんが、この病態だと言うのを聞いて知りました。 以前から白砂糖をよく取る子は低血糖を起こしやすく、そのため切れやすいとかイライラし易いと知っていました。 こんな立派な名前の病態が付いていたのですね。 メカニズムとしては、血糖値上昇→インスリン過剰分泌・分泌遷延→機能性低血糖 というパターンです。 何故、糖質を摂るのに低血糖?と思われるかもしれませんが、高くなった糖分を下げるため過剰に血糖を下げるインシュリンが作用してしまうのです。 この機能性低血糖症、日本ではあまり認知されていませんが、結構居るそうです。 高雄病院、江部康二 先生が、次のように解説していました。 以下、ネットから。 機能性低血糖症は、1924年アメリカのSeale Harrisによって指摘された疾患で、血糖値の低下に伴ない、精神的・身体的症状を来たす疾患です。 易疲労感、気力低下、眠気、集中力低下、物忘れ、不安、いらいら、頭痛、めまい、発汗、震え、心悸亢進、筋肉痛、甘いものに対する異常な欲求、異常な空腹感・・・ などの症状がみられます。 ほとんどの機能性低血糖の背景には、インスリンの過剰分泌及び遷延分泌があります。やせ型でインスリン抵抗性がなくても、機能性低血糖を生じる人はおられます。 機能性低血糖症は、糖質を摂取して血糖値が上昇して、追加分泌インスリンが基礎分泌インスリンの10倍、20倍、30倍レベル出たときに、早ければ食後2時間、通常は4時間から5時間くらいで発症することが多いです。 家族歴に2型糖尿病があって、現在は正常型で糖尿病を発症していない人は、インスリン追加分泌が遷延することがあり、機能性低血糖が特に起こりやすいです。 境界型および糖尿病でも、軽症の段階だと、インスリン分泌能力はまだ残っています。 そして、インスリン追加分泌が出遅れて遷延するのが、2型糖尿病の特徴なので、「機能性低血糖+境界型」あるいは「機能性低血糖+糖尿病型」というパターンは、結構あると思います。 一方、家族歴に2型糖尿病がなくて、現在糖尿病的には全く正常でも、インスリンが過剰に分泌されるタイプの「機能性低血糖+正常型」もあります。 こちらは若い人に多く、それこそ小学生や中学生でもありえると思います。当然、高校生や大学生は言うまでもありません。 いずれにせよ 糖質摂取による血糖値上昇→インスリン過剰分泌・分泌遷延→機能性低血糖 というパターンです。 従って、精製炭水化物が、最も機能性低血糖を起こしやすいです。未精製の炭水化物はややましですが、やはり起こす可能性があります。 糖質制限食なら、食後高血糖がほとんどなくて、インスリン追加分泌もごく少量なので機能性低血糖をほとんど生じません。 スーパー糖質制限食なら、インスリン追加分泌は、野菜分のせいぜい2~3倍くらいまでです。 糖質制限食実践中は、肝臓でアミノ酸などから糖新生が行われるので、通常は基本的に適正血糖値が保たれます。 ちなみに脂質は、インスリンを分泌させません。タンパク質は、ごく少量インスリンを分泌させます。 この機能性低血糖症、日本ではあまり認知されていませんが、きっちり問診してみると、若い人でも結構おられますので注意が必要ですね。 診断は、75g経口ブドウ糖負荷試験で行います。 通常、糖尿病の診断のためには空腹時に開始して、ブドウ糖を服用後2時間までの血糖値を測定します。機能性低血糖症の場合は、ブドウ糖服用後5時間まで血糖値を検査します。 機能性低血糖症の場合、負荷後30分で120~140mg程度に上昇した血糖値が、60分で60mgになったりします。これだと眠気も来そうですね。さらに4時間後とかに40mgとかまで下がることもあります。 血糖値が40mgなら明らかな低血糖ですが、60mg以上あって正常範囲でも、血糖値が1時間で50mg以上下がると眠気などの症状も出やすいようです。 また、空腹時の検査開始時血糖値より20%以上、負荷後血糖値が下がる時点があることが多いようです。 例えば負荷前空腹時血糖値が90mgくらいで、ブドウ糖負荷後4時間で60mgとかになります。これで33%下がってますね。 本来血糖値が正常になれば、インスリン追加分泌も即中止になるはずなのですが、出過ぎた場合と遷延した場合には必要以上に血糖値が下がります。 ともあれ5時間の「75gブドウ糖経口負荷試験」って、患者さんもスタッフもちょっと大変なので、高雄病院では実施していません。だいたいは問診で見当がつきますし・・・。 大多数の機能性低血糖症が、糖質制限食で改善する可能性が高いと思います。 引用は以上です。 症状はほとんど自律神経失調症と同じです。精神症状で安定剤が要ると思ってしまう前に、この疾患の可能性をぜひ思い浮かべましょう。 私の疑問は、インシュリンが過剰に出て低血糖まで起こす人と、普通に反応する人とは何が違うのか、知りたいところです。 それにしても患者さんから、いろいろ教えられますわ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2014年06月28日 17時00分48秒
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