職人不足
「職人不足」という話がよく出ます。バブル崩壊後に日本の状況を、失われた20年、なんていいますが、職人さんも失われたようです。バブル崩壊で世の中の景気が悪化したのはご存じの通り。日本の中のいろんなことが、右肩上がりを安易に「予想」して組まれていたものだから、バブル崩壊とともに、いろんな問題が一気に出てきました。景気が悪くなっても、それなりに準備していれば大きな被害も出なかったのでしょうが、日本全体が受け身をする準備もなく背負い投げをくらったようなものでしょう。民間企業の倒産やリストラで失業者も増え、就職事情も悪化しました。そんな中でお役所が絡んだ第三セクターも次々破たん。年金基金の不透明な流用だとか、「かんぽの宿」が安く売却されたりして、役所がらみの事業はぜんぶ悪いという風潮になりました。まあ、確かに、お金はどんどん入ってくるくらいのつもりでいたのでしょうから、使い方も相当ルーズであったということでしょうね。不景気になって、民間もダメ、公共事業も減少ということで、建設業は当然縮小に向かいます。昨日、取引のある建設会社の副社長さんが言われていたことが印象的でした。要約すると、・バブル崩壊後、若い人たちは建設業に失望し転職していき、残ったのは40歳以上の職人さんたち。・その職人さんたちは、すでに60歳以上になり、これから職人大量引退期を迎える。・職人不足は、これからが本番。とのこと。一度縮小したものをもとに戻すことは容易ではないですね。そしてもう一つ「なるほど」と思ったのは、「床の間を作れる職人さんがいなくなった」という話。確かに今は本格的な和室もなくなって、さらには和室そのものがない家も増えています。それも世の中の流れとはいうものの、結局、和風建築そのものが一部の宮大工さんの中だけに「伝統芸能」のように残っていくのかもしれません。「職人さん」というのは、字のごとく、「職」の人。即ち、その道のプロフェッショナル。急に給料を増やしたからと言って、増やせるものではありません。もともと日本人というのは、手に職のある人に敬意を払ってきました。これから、「職人さん」の待遇、社会的地位を含めて、希望のある職種にしていかないと回復は難しいのでしょうね。そんなことを感じました。足場板を洗ったりしていた作業場を解体したあとの様子です。冒頭の写真が、作業場を解体しているところ。ここに新しく工場を建てることになりました。