カテゴリ:詩、俳句、短歌、川柳、都都逸等
「孑孑」という漢字ご存知だろうか? 子供の「子」の字の最後の画を跳ねて書いたものを二文字続けたことばになりますが、これを正しく読める方そういらっしゃらないのではないか。 「ぼうふら」と読むのだそうです。蚊の幼虫のことです。 「ぼうふら」、同じ字を重ねてどうして前後違う読みをするのかと思ったら、もともとは後の方の「孑」の最後の跳ねは、左側が突き出ていないのが「ふら」と読ませる本来の字なのだそうです。私のPCでは変換できませんでした。まるでハングル文字のようですな。 辞書をひくと、「けつけつ」と読ませて「孑孑たり」という形容動詞でつぎのような意味が書いてありました。 1 一人ぬきんでたさま。2 孤立するさま。3 小さいさま。こせこせしているさま。 そうすれば、「ぼうふら」は3の意味からきているのだなということがわかりますが、1と2の抜きん出た孤高の存在と言うのは、ある意味魅力的ですね。 歌人・小林 光 著『うたの動物記』に取り上げられていたのが、この「孑孑」。
意外やボウフラは俳句によく読まれているそうで、夏の季語になっているとは知りませんでした。 書かれていた3句をご紹介したいと思います。いづれも有名な俳人の手になるものです。 孑孑の蚊になる頃や何学士 子規 けふの日も棒ふり虫よ翌(あす)も又 一茶 我思ふままに孑孑うき沈み 虚子 私が感じるところ、時代は違えども日本の生んだ優れた俳人3人が3人とも、「孑孑たり」の1.2の意味を意識しているのではないか? 名は体を表すといいますが、子供の頃にそれほどまでに抜きん出ているのなら、蚊に変わったときはどれほどのものになっているのかと皮肉ったのが子規。 一茶は、2のほうに力点を置いたのではないか?孤高の我とボウフラを重ねて笑ってみせた。 我とは虚子でもありボウフラでもあるのか?浮き沈みするボウフラに存在を暗示させます。 そこで私も一首、恥を忍んで・・・。 我もまた孑孑(けつけつ)たらん 人生の往路歩みて久しける身を お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2017年02月09日 12時17分17秒
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