カテゴリ:本
浅田 次郎 著 「椿山課長の七日間」をいっきに読破しました。
大手デパート婦人服売り場担当課長の椿山和昭は、仕事の無理がたたって46歳の若さで脳溢血を発して死んでしまう。 ・・・ふと気付いてみると椿山はあの世の入口にいるではないか。 そこは死者に死後の世界の講習を与えるという「スピリッツ・アライバル・センター」。本来はきっと厳粛であろうと想像する現世と来世の中間の世界を、浅田はまるで運転免許書更新センターのように、喧騒にあふれる殺伐とした事務的な世界に描いている。 現世で犯した罪の大小、種類によって分かれた講習部屋に入り、そこで講習と説明を受ける。心を悔い改め、机の上の改心ボタンを押すとたちまちにして極楽に昇ることが許される。だからどんな悪人でも(悪人であればなおさらと言うべきか)このボタンを押すのであった。 浅田流「悪人正機説」は、いかにも現代的ですこぶるわかり易い。なるほどそういうことなのかと妙に得心してしまう。(笑! 椿山課長もボタンを押せば良かった。椿山に課せられたのは「邪淫の罪」。同期入社の佐伯知子と淫らな肉体関係を、妻と結婚するまで18年間も続けた罪だという。しかし、椿山はこれが納得できなかった。 「おまえら、本当に思い残すことはないのか。そんな簡単な人生だったのかよ。自分だけとっとと極楽に行けば、それで本当にいいのかー」 椿山は再審査を希望し、7日間で舞い戻る、復讐をしない、正体を明かさないの3条件のもと、美女に姿を変えて現世に舞い戻ることに。条件を一つでも破ると、地獄へ真っ逆さまに落ちるという。 現世に戻った椿山の周りに現れる不思議な少女(中身は車にはねられて死んだ少年)と、一見筋目正しい弁護士風の男(中身は一家を構えるヤクザで、人違いで殺された)。実は二人とも椿山と同様再審査を希望し現世に戻った仮の姿なのであった。 少年は実の父母に会って感謝の言葉を述べたい。ヤクザは残された子分を真っ当の生活に戻させることを希望したのであった。 この少年とヤクザ、そして椿山課長の3人が現世でやり残したことを遂げようと悪戦苦闘して行くうちに、椿山の家族(老いた父親、妻、一人息子)、さらには「邪淫の罪」の相手佐伯知子、職場の部下嶋田係長も加わて、意外な事実が次々と明らかになっていく。 果たして椿山課長は、「邪淫の罪」を晴らし、やり残したことをすべてやり遂げ、納得のゆく昇天を果たすことが出来るのであろうか? ![]() にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2017年07月24日 12時20分05秒
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