カテゴリ:本
江戸の美味いものを題材にして、当時の人々の暮らしと生き様を鮮やかに蘇らせるエッセイ「大江戸美味草紙(むまそうし)」(杉浦日向子著)。
当時の江戸人が好んで食べた美味しい食べ物を川柳とともに紹介してくれます。その「暑気払いの切り札」の章に取り上げられていたのは、「どじょう」。 今年は土用の丑の日が二日ある年だとか。現代人ならば、さしずめ鰻ということになろうかと思いますが、鰻は江戸の初期にはあまり食べられなかった魚だとか。庶民がもっぱら好んで食べたのが、どじょうだそうです。 そのどじょうはどのように調理されて食べられたか? ささがしの牛房(ごぼう)のそばで皆殺し 念仏も四五へん入れるどじやう汁 笹掻(ささが)きにしたごぼうと一緒に煮られて、あえない最期をとげるどじょうをうまく表現していますね。江戸人はどじょう鍋が大好物であったそうです。 私も東京観光で浅草の有名な老舗のどじょう料理屋で、このどじょう鍋を食べた経験があります。 先にあげた川柳では「どじょう」を「どじやう」と表記してありますが、私が訪れた老舗のどじょう料理屋の暖簾には「どぜう」と書いてあったと記憶しています。 「どじやう」と「どぜう」、何れが正しい表記か? 正解は両方とも「 ○ 」。(笑! 杉浦さんがどじょうの表記の仕方の違いについて、説明してくれています。 「どじやう」はどじょうが生きているときにこう書き、「どぜう」は食い物になったときの呼称であると。 すなわち、「どじやう汁」は生きたのをそのまま鍋に入れるからあくまで「どじやう」で、「どぜう鍋」はあらかじめ骨までやわらかく下茹でした姿煮や、裂いて頭を落とし骨や内臓をきれいに取り除いた開き身を用いるから、すでに「どじやう」ではなく食材としての「どぜう」なんだそうです。 なるほど、そういうわけだったのですね。江戸人は妙なところにこだわりを持ったんだな?これも江戸人が命の次に大切にしたという粋というものなのだろうか。 そういえばかの老舗のどじょう料理屋では、柳川鍋の注文を取るとき、「骨付き」「骨抜き」を問われました。「骨付き」にしろ「骨抜き」にしろ下処理されているから、「どぜう」ということになりますね。暖簾に書かれていた文字には、そういう深い意味があったのでした。 さらには「どじょうはどうも・・・」という人のために、「鶏肉」というのも用意されていたのには驚きました。どじょう料理屋で鶏肉の卵とじを注文するなんて、ごはんにかければ親子丼じゃないか。(笑! 当時の江戸人が知ったらさぞかし顔をしかめるでしょうな。(笑! 今年は8月6日が土用の二の丑にあたる日とか。一の丑の日には鰻をたべたから、今度は「どじょう」・・・ではなかった、「どぜう鍋」を食べてみようかしら。 江戸人の粋を味わってみるのもまた乙というもでしょう。 ![]() にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2017年08月03日 12時20分05秒
[本] カテゴリの最新記事
|
|