カテゴリ:そばの雑学
「あなたの趣味は何ですか?」と問われれば、差しさわりのないところで「読書」と答えることにしています。たまに「ほぉ~、それではどのような本をお読みになるのですか?」 と畳みかけて来る人がいて往生します。 そこで相手の顔をうかがい窺いながら、「歴史ものですかね。時代小説を少しばかり」と、お茶を濁す始末です。一度こんなことがありました。さらにそのあと、 「時代小説ですか。どんな作家のものを読まれるのでしょう?」と三度問われ、「うっ」と息詰まってしまいました。 きっとその方も時代小説の大ファンに違いないと思い、「あなたこそ誰のファンでしょう?」 と問い返したら、 「山岡荘八、池上正太郎、司馬遼太郎、柴田錬三郎、藤沢周平…」 大御所の名をずらりとお上げになるではありませんか。誠に恐れ入った次第です。 さて、そんなことがあってから、趣味は何かと聞かれれば、「スポーツ観戦。もっぱらテレビでプロ野球を」などと答えていれば無難なものを、つい粋がって 「そうねぇ~、落語ですかね」などと言ってしまうものですから、今度は「ほぉ~、志ん朝ですか。圓生ですか。談志もいいですよねぇ~」と迫られることになる。 ご承知のように落語はオチが命。機知にとんだオチ(サゲともいう)で噺が結ばれる。オチがあるから「落とし噺」、ゆえに「落語」と呼ばれるようになったのが、江戸時代の初めごろのことといいます。奇しくもそばが今のように江戸の街で細く切られて広く食べられるようになったのも同時代の江戸の街。新しいもの好きの江戸人は寄席に入って落語を聞いたあと屋台の蕎麦屋に立ち寄って、一杯ひっかけつつそばをすするのを何よりの楽しみにしたのでしょう。 落語の演目のひとつ。誰でもご存じの「時そば」は、そこまで生活に余裕のなかった庶民の話。与太郎が出てきますね。 「ひ、ふう、みぃ~、よ~、いつ、む~、なな…、おいオヤジ、今なんどきでぇ~。はい、八つで。九つ、十(と)~…」 十六文と決まっていた当時の蕎麦屋の勘定を一文ごまかした。これを見ていた与太郎が、 「うめぇ~ことをやりやがった。おいらも一文くすねてやろう」と真似たまではよかったが、蕎麦屋のオヤジの方が一枚上手だった。「七つ」まで調子よく読んだ与太郎。 「おいオヤジ、今なんどきでぇ~」 「はい四つで」 すかさずオヤジが答えて、与太郎は 「いつ、む~、なな…」 笑いの渦の中を噺家は高座を降りていく。 ご存じそばが出て来る落語の噺でした。 にほんブログ村 FC2ブログランキング 人気ブログランキング PINGOO! ノンジャンル お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022年05月02日 11時50分05秒
|
|