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テーマ:虫!(822)
カテゴリ:昆虫(ハチ)
そのコマユバチを、Entomological Society of Canada<カナダ昆虫学会>のサイトにある「Hymenoptera of the World<世界の膜翅目>」と、Maeto Kaoru(前藤 薫)氏の「Systematic Studies on the Tribe Meteorini (Hymenoptera, Braconidae ) I~VII<Meteorini族の分類学的研究(膜翅目、コマユバチ科)>」を使って科から検索した結果、コマユバチ科(Braconidae)ハラボソコマユバチ亜科(Euphorinae)に属すギンケハラボソコマユバチ(Meteorus pulchricornis)であることが判明した。 しかし、科から種までの検索は、かなりややこしく、また、証拠写真も多数を必要とする。其処で、今日は蜂の生体写真のみを載せ、種の検索については別の機会に譲ることにした。
羽化したのは、前回の繭の写真を撮ってから9日後の12月14日、体長約4.5mm(産卵管鞘を含まない)の繊細なコマユバチであった。 こうゆう小さな虫は、以前紹介した「アブラバチの1種(その2)」の様に、カーテンに留まらせて撮ることも出来るが、虫が小さいので、カーテン地の網目が何とも目障りになる。其処で、管瓶に入れて冷蔵庫に放り込み、よ~く冷やして動けなくし、室温に戻して常態に回復する時を狙って撮影した。
2番目の腹側から撮った写真は、冷蔵庫から出した直後で、殆ど死んでいる様に見える。しかし、20秒ほど(測定はしていない、単なる印象)で起き上がってしまう。ヒラタアブ類は、もう少し時間がかかり(分単位)、飛び出す前に身繕いなどするので撮り易いが、こう云う小さい虫は、回復が非常に速い。体重は体長の3乗、表面積は2乗に比例するので、小さい虫ほど速く冷えるし、速く暖まるのである。
起き上がっても、脚がシッカリして居る訳ではない。それでも、動かない脚を引きずる様にして(下の写真の右前肢付節)移動し始め、やがて翅を開いて飛んで行ってしまう。しかし、完全に回復してはいないので、近くに留まったりして再捕獲。 見失ったこともあるが、暫くすれば明るいカーテンの方に行くので、心配は要らない。また管瓶に入れられ、冷蔵庫行き。その後、半日以上は入れておかないと、立ち所に回復してしまい撮影する機会が殆ど無い。今日のコマユバチ成虫の撮影には、何と4日もかかったのである。
こうゆう小さなコマユバチには見ていて綺麗だなと思う種類が多い。幼虫は内部捕食寄生性だから、まァ、生態はオドロオドロしいとも言えるが、最後は綺麗な成虫に成長する。別に色彩に富んでいる訳ではない。しかし、体全体と言うか、姿が美しい。
前掲の前籐氏の論文に拠れば、このギンケハラボソコマユバチは日本で最普通種の一つとのこと。東京都本土部昆虫目録にもチャンと載っている。しかし、"ギンケハラボソコマユバチ"をGoogleで画像検索しても殆どヒットしない。一方、学名で検索するとそれよりもずっと多い写真が出て来る。本種は、日本全国、欧州、土耳古の他、世界の様々な地域に分布するらしい。 和名での検索がヒットしないのは、写真を撮っても種類が分からないのでお蔵入り、或いは、「コマユバチの1種」としてしか掲載されていないからだと思われる。現に、昨年もう一つのWeblogで紹介した「お知らせ+コマユバチ科の1種(Braconidae gen. sp.)」は、写真の解像度が低いので検索は出来ないが、本種に非常に良く似ている(但し、縁紋や後腿節先端の色は多少異なる)。
また、前掲論文に拠れば、本種はコブガ科、ヒトリガ科、ドクガ科、シャクガ科、ヤガ科、カレハガ科、アゲハチョウ科、シジミチョウ科、タテハチョウ科等の幼虫に寄生することが報告されており、広く鱗翅目の幼虫一般に寄生することが出来ると考えられている。 その為、世界的に鱗翅目害虫の駆除に天敵としての利用が研究されており、また、本種が産しない国では、外国からの導入も検討されている様である(既に米国に導入されている)。我国でも、本種が最近被害の多いオオタバコガの有力な土着天敵の一つであることから、飼育の容易なハスモンヨトウを使って増殖させ、オオタバコガの駆除に利用しようと云う研究がある(農業・食品産業技術総合研究機構-平成10年度四国農業研究成果情報)。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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