カテゴリ:アニメ・漫画
昨夜は東北地方で震度6強の大きな余震があったそうですが、大丈夫でしたでしょうか?ネットやTVで震災関連のニュースを目にするたびに胸が痛みます。遠く離れた地でぼんやりとニュースを眺めることしか出来ず、本当に心苦しいかぎりです。一日も早く余震の恐怖から開放されることを切に祈るばかりです。
地震で多くの方々が大変な目に遭っている中、どうでもいい話で大変恐縮なのだが、バイト先の古本屋さんに先日、大量のGARO(月刊漫画ガロ)が持ち込まれた。40年ほど前のものにしては状態が良く、とりあえず中に破損等がないか1冊ずつ確認しているうち、ついついそこに連載されていた水木しげるさんの「星をつかみそこねる男」を読み耽ってしまった。 新選組局長・近藤勇の、淡々飄々とした中に笑いあり、悲哀ありの伝記漫画で、数ある新選組漫画の中ではかなり上質のものではなかろうか。新選組を美化しすぎていないところにも好感が持てた。 何より「星をつかみそこねる男」というタイトルが物悲しくて素晴しい。まさに近藤勇の人生を、また新選組の成れの果てを上手く言い表しているように思う。 新選組隊士の中で私の最もお気に入りは、美形で短気だったという原田左之助。 新選組関連の著書等には、左之助はいつの間にやら試衛館(近藤さんの天然理心流道場)に出入りするようになったと書かれているものが多いが、水木さんの漫画では珍しく左之助と近藤さんの出会いが描かれていた。当然フィクションだが左之助の性格がよく出ていて、ちょっぴり嬉しかった。 水木作品ならではの描写だと思ったのは、処刑された近藤さんの遺体を遺族が掘りに行くシーン。 新選組に関する著書といえば誰もが真っ先に思い浮かべる子母澤寛さんの新選組三部作のひとつ「新選組遺聞」に載っている「勇の屍を掘る」によると… 私達七人(私というのは勇の娘婿である近藤勇五郎、他に勇五郎の父・音五郎、分家の宮川弥七ら)が、用意してあった鍬で、土を二尺ばかり掘り下げると新しい筵が一枚出て、その下に勇の死体があったのです。首は素よりありません、胴体だけがうッ伏しになっている。…(略) 「ただ、ここにある死骸は、みんな首がないのだから他人の死骸と間違わないように」 と、頻りに、この首のない勇を改めました。何より証拠は、左の肩の鉄砲傷の痕です。これを探すと、只今の一銭銅貨位の大きさで、親指が入る程深くなっていました。 七人がかりで、棺箱へ入れようとするが、何しろ三日もたっているので、ずるずるして、腕でも脚でもうっかりつかまれぬのには困りました。 父は、これを抱くようにして 「残念だろう残念だろう」 と、泣きます。私はもとより、縁もゆかりもない駕かきまでが声を上げて泣きました。 このシーンを水木さんは割と忠実に淡々と描いていた。漫画や小説というのは死を美化してしまいがちだが、こういう場面もきっちり描いているのは水木さんならではだろう。 水木版新選組には人生の儚さや滑稽さが滲み出ていて、おもろうてやがて悲しき…といった感じ。子母澤さんの「新選組三部作」は別格として、司馬遼太郎さんの「燃えよ剣」、三宅乱丈さんの「秘密の新選組」(新選組幹部にオッパイが!という斬新奇抜な設定もスゴいが、その設定がやけに上手く史実と絡んでいる点が素晴しい)と並ぶ名著だと思う。 同じく新選組を描いた漫画といえば、渡辺多恵子さんの「風光る」という人気少女漫画がある。男装した少女が新選組隊士になる話で、歴史考証がきちんとなされている点では好感が持てるものの、如何せん設定自体がキツすぎる上、沖田総司のあまりの美化っぷりときたら!(^^ゞ (一方で、三宅さんの「秘密の新選組」は沖田さんに対する扱いが酷すぎるような…) 同じテーマにしてこの少女漫画と水木作品は対極にあるような感じ。渡辺作品で新選組ファンになった方には、ぜひとも「星をつかみそこねる男」を読んでみられることをお勧めしたい。 ※ 文章の一部で不快な思いをされた方、大変申し訳ありません。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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