『我愛香港開心萬歳』
今年の旧正月に香港で公開された映画『我愛香港開心萬歳』ですが、DVD化された時に入手したままずっと未見だったので、観てみました。お話は、景気が悪化して破産してしまった呉順(レオン・カーファイ)は、父親の呉通(フォン・ツイフェン)が一人で住んでいる実家の公営住宅に、一家5人で世話になる事になった。妻(サンドラ・ン)は市場でヨソ者に扱われている事から、ダサダサな服に変えて街に馴染もうとしたり、長男は違法屋台の取り締まりの仕事をしている事で、団地の周辺の人たちの顔色を窺いながらの生活、長女はチャンスを得ようとコスプレのモデルのバイトをしていた。呉順は昔を懐かしみながら暮らし始めた。ある日、その昔に住民みんなで貯めていた金を持ち逃げした托水龍(エリック・ツァン)が団地に戻って来た事で呉順は怒り心頭となるが、かつて2人で遊びまくっていた時代を思い出し、近所のパン屋の美人姉妹が今どうなっているか探りに行ったり、幼馴染みの素貞(アニタ・ユン)も団地に戻って鍼灸院をやっていると知って、こっそり部屋を訪ねたりした。そんな日々を過ごしていたある時、再開発の知らせが届き、初めは喜んでいたが・・・という感じに進んでいきました。昨年の旧正月映画『72家租客』と同じく、ショウ・ブラザーズ(邵氏兄弟)とTVB(無綫電視)が製作した映画との事で、豪華な出演者でした。また、昨年まではレイモンド・ウォンが製作する旧正月映画の常連だったサンドラ・ンが、今回はこちらの作品に出演している事でも、更にコテコテなコメディとなっていました。それに、主役のレオン・カーファイもコメディで3枚目な役を演じている方が、何となく似合っているようにも思います。ところどころに回想シーンが挿入され、昨年と同じく古き良き昔の香港を懐かしむ内容ですが、今回は1980年代を振り返っていました。しかし、80年代にしては回想シーンのノリが70年代のようでしたし、冒頭ではサミュエル・ホイの『打雀英雄傳』、終盤にはウィナーズ(温拿)の『始終都係朋友好』の曲が使われていたりしたので、香港人の気持ちとしては70年代の方がより良く思っているのかもしれません。公営住宅で暮らす庶民の人情などが描かれていますが、今回の作品は当時の細部まで知っている香港人でないと、心底楽しめない感じでもありました。でも、近隣の人たちと人情深い付き合いをしている部分は昔の日本でも同じでしたし、日本でも懐古趣味なものがここ近年増えていますので、そういった意味では共通なのかと思いました。(K)