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2017年02月16日

働く女性たち…「美容師の復讐理子」…駆け込み寺「洋風居酒屋ポン吉２９話

カテゴリ：カテゴリ未分類

働く女性たち…「美容師の復讐理子」…駆け込み寺「洋風居酒屋ポン吉２９話

駆け込み居酒屋で有名な「洋風居酒屋ポン吉」の店の道路の向かい側の角地には京都の美容室チェーン「くるみ美容室」の西大路店がある。この店の店長でもある３５歳の理子はこの居酒屋の常連客でもあった。店のママの幸子らもこの理子先生の客でかなりこの美容室は繁盛していた。ある日、理子が浮かない顔をして店に来た。マスターの音吉は、
「どうしたん…店の営業時間中に?」
「マスター聞いてよ、私があの店の店長から山科の店に転勤でそれも店はセット椅子が３台の店でこの「くるみ美容室」チェーンの５店舗の中でも一番客数が少ない店よ～」
「ほう、それまたなんで?たしか～理子先生はこの店のベテランで美容学校を卒業してもう１５年も勤めているのに…」
「それがね～オーナーの二代目で谷山洋一というのがいるのだけど、その４５歳の社長から私が誘惑されたの。そんなのまったく趣味でないから断ったらこの左遷のような人事になったの」
「ほう、振られた腹いせの報復人事なの?」
「はい、それに副店長だった直美とそのオーナーができたらしく、その直美をこの西大路店の店長にしたの～もう、あんなに面倒を見た直美に裏切られて…それで店に辞表を叩きつけて辞めたの、もうなんか復讐をしないと腹の虫が収まらない…」

この話はこの地域のサザエさんといわれているパン喫茶のママ発のニュースとして学区中の噂になるのには一週間もかからなかった。またこの噂話はこの地域密着型の洋風居酒屋ポン吉の客にも知れ渡っていた。その話を聞いた常連の７４歳の留吉がオーナーをしているワンルームマンションの１階のテナントの借主が経営不振から夜逃げしたとこで、しかもその店は美容室とネール専門店だった。つまり、店は狭いがセット椅子が２台とシャンプー台、それに美容器具一式がそのまま残っているという。

さらにこの店は理子が勤めていた「美容室くるみ」とは５軒ほど離れるだけの立地条件になる。理子はこの店に勤めて１５年にもなるが、どんなに忙しくても残業をしても月に２０万円以上の給料はもらったことがないという。そのために貯金も僅かしかなかったが、これなら改装費はほとんどかからず、しかも家賃は８万円という格安だったので店をオープンすることになった。

この話を聞いた新店長の直美は激怒して開店準備中の理子に文句をいいにきた。直美は、
「理子さん、１５年もお世話になった店の目と鼻の先で商売をするなんて常識が外れているわ…」
「なにをいっているの、直美こそ妻子がいるオーナーとできているじゃないの…」
「それとこれとは話が違います。それに理子さんは店の顧客の情報を無断で持ち出して開店のお知らせを郵送しているでしょう。しかも、店の名前は「理子の美容室」というが、理子先生として有名になったのは「くるみ」のおかげよ!」

この話も京雀のかっこうの材料になり、理子先生が１人で店をするのだからみんなで時間がかち合わないように連絡を密にしましょうと「理子の美容室」のHPの予約の欄にそれぞれが判断して記入をしていた。それでオープン初日から約一か月分の予約が埋まっていた。この客というのはもちろん元「くるみ美容室」の客だったために直美店長の「美容室くるみ」は閑古鳥が鳴いていた。

店が月、火と連休になる月曜日に理子はささやかな店の開店パーティーを音吉の店でしていた。これは音吉の提案で会費制として近所の有力マダムを招待していた。そのパーティーの挨拶で音吉は、
「これはどんな商売でもそうだが店が流行る流行らないのは扱っている商品が安いとか高いとかではなく、その店の店長のキャラ一つにかかっている。それが店の人格になり人々は安心してその店に行けるようになる。この理子さんはその磨き上げた美容の腕もそうだが、やはり理子さんという人格があってこそ、このように沢山のファンが新開店の店にかけつけたくれたことでもわかります」
という挨拶と乾杯でパーティーは始まっていた。

やがて１年が経って「美容室くるみ」は経営不振で西大路店を閉鎖することになった。理子はこの店の７台のセット椅子と５台のシャンプー台のままここを借りたいとビルのオーナーに交渉をしていた。これらも売れば中古としての商品価値はあるが、その他の撤去費用を考えればトントンになるというのでビルのオーナーと「美容室くるみ」の社長とが話し合ってこれらを無償で理子に譲ると決定していた。そしてその代わりとして美容師の直美以外の５名をそのまま理子が雇用することになった。もちろん、看板は「理子の美容室」になる。理子先生わずか１年でセット椅子７台の美容室のオーナーになったのです。

そんなころ理子が最高級の赤インを持って音吉のマンションを訪ねて来た。音吉は理子にこのマンションを教えたこともないのにと不思議がっていたが、理子は、
「このマンションはママの幸子さんに教えていただきました。私はどうしても音吉さんに恩返しをしたいと幸子さんに前からいっていたの。それなら音吉さんが好きな赤ワインと料理を持って、それに音吉さんが泣いて喜ぶ…あの～その～」
「もしもし、理子さん、私はそんな理子さんにお礼を言われるほど今回の件では活躍はしていない」
「そんなことはありません。前の店のビルのオーナーも「くるみ」のビルのオーナーも音吉さんから頼まれて私にテナントを貸したと白状してくれました」
「そ、それは～まま、あいつらとは私は友達だから…」

そこにママの幸子から電話があった。幸子は、
「その理子さんね～私からマスターへのバレンタインのチョコです。ゆっくり味わって食べてね～そら～私も音吉さんが大好きだけど、やはり美味しいものは私が独占しないでみんなで分かち合おうと話あったの…わかった音吉どん、女に恥をかかすとどうなるかはわかっているよネ…」

こうして幸子からのチョコのプレゼントと赤ワインを味わうという音吉にとっては最高のハッピーバレンタインデーとなった。

　　　　　　　