赤いカミオン(フェラーリ643)
端から見ればまぁまぁなんじゃねーの?ってことでも、当事者としたらとても満足領域じゃなくって愚痴のひとつもこぼしたくなるっつーことは、間々あることのよーで。マテル1/43 フェラーリ643 “ドイツGP”#28 ジャン・アレジ 前年、アイルトン・セナの決死の鈴鹿カミカゼ特攻で、エンジンヘビーでバランスに欠けるマクラーレンよりはるかにマシン性能に優れながらも、チャンピオンを取りそこなったフェラーリだが、そのシャシー性能差ゆえにマクラーレンが物凄い新機軸を出してくるか、あるいは継続開発でよほどのアホをやらないかぎりフェラーリの戴冠で決まりキンちゃんと言われた1991年シーズンだったが、そんな楽観論は開幕前までで、いざフタを開ければ名馬641/2の純粋後継たる642は超駄馬に変貌していた。91年シーズンのためのウィング規制がその原因であるが、そんなもんオフシーズンテストで確認しとけよシロートじゃあるめえし、なハナシなんだが、圧倒的優位に胡座をかいて結果コケるとゆーのも世間じゃよくあるハナシ。(圧倒的じゃないか!と高笑いの挙句に総崩れしたア・バオア・クーを例に出すまでもなく。)んで、こんな筈じゃあなかったとサイドポンツーン形状はじめあちこち大特急で手直しするも、一度崩れ始めたバランスは二度と取り戻せず、良かれと思ってやればやるほど悪くなるのもよくあるハナシ。もうそうなっちゃうと、開発の大迷宮から抜け出すには継続開発をブッた切るしかテは残ってないってなわけで、開発半ばで急遽引っ張り出されたのが643。スティーブ・ニコルズとジャン=クロード・ミジョーによる643は、確かにジョン・バーナード発信の639系とは一線を画すデザインで、名馬641/2やこれまた名馬マクラーレンMP4/4を仕上げたスティーブ・ニコルズが開発に絡んでるっつーことで、コレは!と思わせたんだが、よくよく見ればどっこにもアイデンティティのない、なんつーことのないデザインだな。(どうしてもってんなら、プロスト似の曲がったノーズか?)笑だいたい、スティーブ・ニコルズって基本コンポーザーじゃなくってアレンジャーだったんじゃねーか?ジョン・バーナードとかゴードン・マレーとか天才肌の尖がったデザインを、うまく現実社会で折り合いつける作業がうまいっつーか、そういう人。だから自分メインの創作ってのはもしかしたら苦手だったのかも。。。でもまあ、なんかヘンテコなもんをくっつけるよりも、迷った時は初心に戻れっていうじゃん。ってことで、わりとプレーンな643に期待がないわけじゃなかったし、実際デビュー戦でプロストが2位表彰台だったし(ドイツのアレジは3位)で、急場凌ぎのロングリリーフのわりにはよくやったほうだと思うんだが、やっぱオレがオレがのトップドライバーには、足りないところがあったんだろう。日本グランプリ終了後のアラン・プロストが自分似のマシン(笑)に向けて「まるで赤いカミオン(トラック)じゃん」これでプロストは一発クビ。我々シロートが見ても、たいした隠し珠もないマシンなんだから上々の出来だろと思うのに、沈着冷静な筈のプロスト教授をして、周りが見えなくなるところがスクーデリア・フェラーリの魔力なのかも知れんな。