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書評日記  パペッティア通信

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Nov 25, 2006
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▼   近年、歴史を「取り戻そう」とする運動が、どこでも盛んだ。 ただのオナニーからアカデミックなものまで。 そんな様々なものを、一緒くたに扱うことに一抹の不安がよぎるものの、冷戦終了後特有の現象といえなくもない。


▼   本書は、「1968年」の歴史的意義を問い直そうとする。 これまでの「1968年」は、先進資本主義国・東欧・ラテンアメリカの世界的動乱、であるとともに、「新左翼」の誕生、「思想的大転換」でもあった。 まさしく「68年の思想」は、「ポストモダン」(リオタール)であった。 しかし、動乱がどのような意味で「68年の思想」と結びついていたのか。 とくに、全共闘などの過激なデモンストレーションがおこなわれた日本では、「団塊の世代」論に絡められてしまい、その思想的意義がまったく論じられていない。 エコロジーやフェミニズム(マイノリティー問題)。 それに解体された大学(資格認定「ハローワーク」の場ですらない動物園化)を始めとして、新左翼が提起した社会的現実は、日本を覆いつくして、もはや保守派すら抗えないにも関わらず。


▼   この「1968年」のもたらした思想的意義と断絶とを明らかにするために、1969年1月18・19日の「安田講堂」史観を粉砕して、あえて1970年7月7日「華青闘告発」中心史観を掲げて論じようとする。 なかなか、魅力的な見解ではないか。


▼   本書の概要をあげておこう。

第1章  先進国の同時多発的現象
第2章  無党派市民運動と学生革命
第3章  「華青闘告発」とはなにか
第4章  ヴァーチャルな世界のリアルな誕生
第5章  内ゲバ/連合赤軍事件/革命




▼   「1968年」のおこした日本での革命。 これが何ゆえ認識されなかったのか。 それは、1968年の提起した課題が、「受動的革命」「反革命的」な形によって実現したためだという。 過激なまでの自由は、ネオ・リベラリズムに回収されて実現した。 これでは、リベラリズムは批判できない。


▼   豊かさの中の革命。 スターリン批判とともに誕生したことが知られる新左翼は、セックスと反抗を描いた青年小説『太陽の季節』を描いてスキャンダラスなスターとして登場した石原慎太郎と同様の、ナルシシズム=ナショナリズムを抱いていたという。 「全学連」結成に始まる大学の学生運動も、68年までは、自らも規律・訓練に参与する主体の一人として、知的優越性の証でもある学生服で、教員ともスクラムを組みながら、デモに出ていた。 ブント=全学連は、「反米愛国」を唱えアメリカの植民地になるなと訴えた社会党・共産党に、すでに日本は帝国主義化しているという批判をおこなったが、「もはや戦後ではない」というナショナリズム的心性に他ならない。 ブント=全学連は、「全世界を獲得する」という永続革命の理念を掲げたものの、それができる特権的な場(他ならぬ日本!)にいるということに他ならないからだ。 60年代の前哨戦、学費値上げ反対闘争でさえ、すでに「遊戯としての闘争」「闘争のための闘争」が始まっていた。


▼   第2章では、無党派市民の非暴力直接行動として評価されてきた「べ平連」の運動が、「党派を意識させられることが無かった」参加者の思惑とは別に、ソ連の仕掛ける「平和共存」路線においてのみ可能であったことが詳述される。 どうして、「ベトナム反戦運動」は高揚したのに、「イラク反戦運動」は沈滞しているのか。 それは、「アメリカが出て行け!」のあとに、ソ連がいたか、それともいないのか、にあるだけではない。 何よりも、小田実の「日本のアジア侵略の歴史」を問う「加害者の思想」は、非暴力主義・市民的反戦平和主義の枠内にあるためには、ソ連の「平和共存路線」を前提としておかなければならなかったためでありという。 「非転向」を貫いたがゆえに戦後進歩的知識人の憧憬であった、宮本顕治率いる日本共産党は、「ベ平連」に敵意を燃やして批判を展開していた。 「べ平連」運動の人脈は、日本共産党から除名された人々「ソ連派」も、合流していて大きな影響力を持っていて、いつのまにか中国派(66年以降、日本共産党から除名される)も賛同者から消えていくからである。  「べ平連」路線は、暴力革命主義の若者には生ぬるい。 とはいえ、全共闘と「べ平連」は、活動家がかぶっていたし、後者は前者のトンネルとして機能していた。 


▼   その「混じりあい」を可能にしたのは、1968年以降、世界的に展開していく市民の「非-市民」化への先駆としての、市民的規律・訓練を施す社会に対しての、違和感と反発にあった、という。 労働組合にも、学生自治体にも頼らない、べ平連の思想。 べ平連は、市民運動ではない。 その論証に、ユダを主題化する三島由紀夫の小説、「親切な機械」のモデルとなった、「アナーキスト」「ソ連派」「中国派」など、さまざまな仮面をもつ、「何も信じていない」山口健二を使って明らかにしていく下りは、本書の白眉と言えるだろう。 べ平連では、たしかにソ連派と「ソ連批判派」の新左翼や全共闘が奇妙に共存していた。 とはいえ、その奇妙な共存は、ソ連の「平和共存路線」を「親切な機械」として利用して、べ平連においてレーニン主義理論「帝国主義戦争を内乱へ」を貫徹しようとするものではなかったか。 「1968年」以降、全共闘は、ソ連「平和共存」路線と決定的に決別してしまい、べ平連とは距離をおいてしまう。 べ平連は、戦後民主主義=市民主義の定着を意味するものであるが、全共闘は「戦後民主主義=市民主義」へのサボタージュに他ならないからである。 かくて全共闘は、丸山を批判し、「学費値上げ反対」から「無期限ストライキ」にスローガンを変質させていく。


▼   第3章は、この状況下に引きおこされた、1970年7月7日「華青闘告発」の衝撃である。 「軍隊建設」をかかげていた新左翼諸党派は、在日華僑たちマイノリティーが強いられていた、入管闘争に興味を抱いていなかった。 盧溝橋事件33周年記念行事主催をめぐって、中核派と架橋青年闘争委員会は激突。 7月7日の集会は、「抑圧民族である日本人諸君」という挨拶から始まる異様なもので、侵略における大衆的民族的責任が問われる、歴史的にみて未曾有なものとなった。 そこでは、「怒れる若者」の抱く、道徳主義(PC)的なものに対する反感、すなわち「ナルシシズム=ナショナリズム」が徹底的に粉砕されてしまう。 日中国交回復よりも毛沢東国家転覆を目指していた新左翼は、このマイノリティー問題の噴出を前にして自己批判を迫られてしまう。 「血債の思想」とその精算 ――― 本来日本人で無くならない限りありえない以上、「無」でありながら「核」である主体を創出しなければならないが ――― を前面に打ち出して、自己否定の果てに現出するギリギリの「主体」の核「日本人」を模索せざるをえない。


▼   「革命の主体」たりえない ――― なりうるとすれば、在日や中国人、朝鮮人や部落民しかない ――― 日本人。 それは、宮本顕治と並ぶ、もう一つの「非転向」主体であると見なされていた部落解放同盟との提携の道を、新左翼に選ばせることになる。 「差別糾弾」闘争の展開。 しかし、それはかつて、部落解放の主張が、「我々も日本国民である」という主張を軸に展開され、その結果、水平社が「戦争協力」をおこなってしまう、いわばナショナリズムと共犯関係にあったことを忘却する道ではなかったか。 そして、本来は存在しないはずの「部落民」が、ナショナリティの核に追認されてしまうことではなかったか。 かくて、部落民が存在しない「核」であることを告発する、中上健次の文学が準備される。 「主体」であることの、「主体」を打ち立てることの、困難さ。 主体であることの責任を放棄する道は、これ以降、サブカルチャーを中心に準備されていく。


(その<2>はこちらです。応援をよろしくお願いします)



評価  ★★★☆
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Last updated  Jan 25, 2007 12:55:33 AM
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