カテゴリ:感情の法則
形外会で安田さんがこんな話をされた。
子供が夜泣きをして泣くのがうるさくて、いつも家内に、そんなに泣かせなくともよさそうなものだと小言を言っていました。 家内はそんな無理を言っても仕方がない。子供は泣くときは泣くものだから、放っておくほか仕方がないと言うので、なおさら癇癪を起こしてしまいました。 森田先生のお話から、私がうるさいと思うのもやむを得ない。家内の心待ちもそれよりほかに仕方がないと考え、そのままじっとしていると、癇癪や気まずさもすぐ消えて、非常に安楽になりました。 これに応えて森田先生曰く 安田くんの、 「泣くのはうるさい。泣かさなければよいのに」というのは、我々の感情の事実です。 母親のほうは、これまでいろいろやってみたが、泣き止ませることはなかなかできない。 放っておくと、かえって早く泣き止むと言う事実を、経験によって知っている。 だから母親でも、泣かれるのはうるさいことは同様である。けれども、仕方なしに我慢している。 安田くんは、私の話によって、うるさいと思うのも、感情の事実であるから、なんとも仕方がないと、あるがままに我慢していると、自然に心が落ち着いて楽になるという。 しかし、この場合には、まだ「事実に服従しなくちゃいけない」 「我慢しなくちゃならない」と言う格言を立てるところの努力があって、相当に骨の折れることである。いわばこれは小乗のやり方である。 「我慢しなければならない」と、型にはまっていては、少しも進歩はないが、 「アアうるさい、どうしてやろうか」と、ああも思いこうも工夫して、子供を観察していると、泣くにもさまざまの泣きぶりがある。 しかれば尚更憤慨して泣くとか、母に叱られて心細くって泣いているのを、端から父親が機嫌を取ると、こころ丈夫になると憤りとのために、かえってひときわ声を張り上げて泣くとか、あるいはいきがかり上、急に泣き止むわけにいかないで、こじれ泣きをしている、とか言うような、さまざまな場合を知ることができるようになる。 小乗は、まだ「あるがままにならなければならない」という、 「思想の矛盾」から脱しきることができず、大乗は、我々の心の「心は日万境に随って転ず」の真の「あるがまま」の変化流転であり、そこに初めて「日に新たに日々に新たにまた日に新たなり」という進歩があり、運命を切り開いて、 「災いを転じて福となす」とか言うような働きも自ずからその間に現れてくるのであります。 (森田全集第5巻 白揚社 676頁より引用) 難しいことを言われているが私なりにこの意味を考えてみた。 私たちは普段イライラするようなことがたくさんあります。 そんな時、ついイライラを取り除こうとしたり、その場から逃げてしまったりします。 森田理論学習をすると、不快な感情は自然現象だからそのまま受け入れるしかないと学習します。 抵抗しなければどんな感情も最終的には流れていってしまうのだと学習しました。 だから行動としては、軽率に不快な感情に対して対応しないように耐えたり、我慢しようとします。 安田さんの場合は、これが「かくあるべし」になって、「耐えなければならない」「我慢しなければならない」という思想の矛盾に陥っている。 「かくあるべし」という考え方は、どんな場合でも葛藤や苦しみを生みだしてしまう。 森田先生はこんな場合、しいて耐えたり、我慢する必要はない。 そうすると益々不快な感情は増悪してしまうといわれているのだと思います。ではどうするのか。 「かくあるべし」ではなく、イライラ、不快感が沸き起こってきたという事実から出発するのだ。 別の言葉でいえば、イライラ、不快感という感情を受け入れてよく味わってみるということだ。 そのイライラや不快感をいかにして軽減させたり、なくすることができるか、工夫したり試行錯誤してみなさいと言われています。 いろんな対応策を思いつくままに、ああでもない、こうでもないと考えておればよい。 結論が出ないままに迷っているうちに、イライラや不快の原因は収まっていることが多い。 つまり何も手を打たないうちに、イライラや不快感が消え去ってしまうということになる。 もし何日もその不快感が消え去らないということがあれば、それはあなたにも理があることだ。 そういう場合は、その原因を落ち着いてよく整理して、理路整然と議論すればよい。 慎まなければならないことは、一時的にそのイライラや不快感に耐えかねて、短絡的に行動を起こしてしまうことだ。その前にイライラ、不快感を受け入れて、味わってみるという過程が完全に抜け落ちて、原因がはっきりしないうちに対症療法的に対応してしまっていることが、致命的な欠陥である。 そのように対応すれば、どんな感情も谷川を流れる小川のようによどみなく流れていく。 短絡的な行動をとると、お城の堀の水のように、汚く濁って雑菌が繁殖していくようなものです。 感情の取り扱いは、基本を押さえて実践すると問題は起こらない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017.05.18 06:30:03
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