「気持ちを伝えるレッスン」 (石原加受子 大和出版 137ページ) に次のように書いてあります。
恐怖や不安、心の傷や手放せない憎しみなどは、それを自分を中心にして表現し、その気持ちよさを実感したときに癒すことができます。
心の癒しや浄化につながるのは、こうした自分の感情の表現と体感です。
プラス感情だけでなく、マイナス感情でもそれは同様。
自分のために流す涙、哀しみや怒りや憎しみを感じている自分、不安や恐怖を感じている自分、それを素直に認めて、そういった諸々の感情を自分のために味わうことができれば、それが癒しと浄化になるのです。その時々に起こる自分の感情や気持ちに気付いて、それらを丁寧に扱って味わう。
そしてそれらを言葉で表現し、手放す。
感じて表現しては捨てる。感じて表現しては捨てる・ ・ ・ 。
そこには相手を支配したり、操作したりしようとする意識はありません。
なぜなら、相手に無理やり理解を求めなくても、自分自身が自分の最良の理解者となれるのですから。
私たちは神経症で苦しんでいる時、恐怖や不安、心の傷や手放せない憎しみなどは、なんとか取り除こうと悪戦苦闘しているのではないでしょうか。
また、どうにもできないと判断して逃げているのではないでしょうか。
その結果、自分の願いとは反対に、恐怖、不安、憎しみなどがどんどん増悪して、葛藤や悩みが大きくなっているのではないでしょうか。
石原さんは、どんなにネガティブでマイナス感情であっても、それを十分に味わうことができれば、癒しと浄化につながると言われているのです。
そして、最初に沸き起こってきた感情を言葉で表現して手放すことが大切だと言われています。
そうすれば、ネガティブでマイナス感情を捨てることができる。大事なこと言われていると思います。
この考え方は、私たちが日々学習している森田療法理論の考え方と全く同じことです。
不安、恐怖、違和感、不快感などは、基本的にはやり繰りしたり逃げたりしないで、素直に認めて受け入れる。無抵抗で味わうことに専念する。
すると、時間の経過とともに、不安などは小さく変化してくる。最後には霧散霧消していく。
不安はレーダーのようなものである。これは危険や問題点を発見するのに役立っている。
不安がなかったら人間の生存は難しくなるでしょう。だから不安はのけ者にしてはいけない。
次に石原さんは不安などの感情を吐き出すことが大切だといわれています。
森田では、「私メッセージ」などの処方で吐き出すことが有効だと言っています。
また不安は欲望と裏腹の関係にある。
だから、不安を持ちこたえたまま、欲望の達成に向かって努力した方が得策である。
このことを森田理論では「流転」を促進することで、感情は早く流すことができると言っている。
そうしないと精神交互作用によって、神経症として固着してしまう。