カテゴリ:観念重視から事実重視への転換
シドニーオリンピックの女子マラソンで金メダルを獲得した高橋尚子さんの話です。
高橋さんは、小出義雄監督の指導を受けて成長した選手です。 最初は、練習ではいい走りを見せても、試合に行くと結果を残せないという選手だったそうです。それを打開するために、小出監督はいろいろと試行錯誤を繰り返しました。 例えば、全力走とジョギングを交互に繰り返すインターバルトレーニングを取り入れました。 また、トラックや平地ではなく自然の中を走るクロスカントリーにも取り組みました。 その他、考え得るさまざまな練習方法を試してみました。 ところが、それらの試みはすべて失敗したそうです。途方にくれました。 万策尽きた小出監督は、高橋選手の走りを、練習方法や技術面だけでなく、精神面、調整方法を含めて、先入観を排除してゼロベースで見直すことにしたそうです。 森田でいう両面観、多面観で分析することにしたそうです。 その結果、正確に原因を究明することができたそうです。 それは、従来の常識では考えられないところにあったそうです。 つまり森田でいう「かくあるべし」に凝り固まっていては、とうてい到達する事はできなかったと思われます。 通常、マラソン選手は、試合の前になると調整期間を設けて猛練習をストップさせます。 試合に向けて、身体の疲労を取り除き、栄養の補給やメンタル面の強化に力を入れる。 そして試合当日に体調と精神状態をピークに持っていこうとするのが常識とされています。 調整期間を設けると、練習でつけた筋力は当然落ちてきます。 でも常識的に考えて、そのスピードはごくわずかなものとされてきました。 普通は短期の調整期間程度で、本番に影響するほど落ちるようなものではない。 高橋さんの場合も、そうに違いないという先入観と決めつけがあったそうです。 小出監督は、事実はそうではなかったということを発見されたそうです。 高橋さんの場合は、他の選手に比べると筋力の落ちるスピードがあまりにも早かった。 筋力の測定で初めて明らかになったそうです。 原因が分かった段階で、トレーニング方法をがらりと変えたそうです。 それは、調整期間を気にしないで、負荷をかけつづける練習方法にしたそうです。 他の選手が調整期間に入っても、高橋選手には練習をさせた。 高橋さんが大学を卒業するまで、誰もこの事実に気づかず、記録を出すことができなかった。 高橋さんが小出監督の指導を受けることがなかったとしたら、二流の選手で終わっていた可能性が高いそうだ。(超一流の自己再生術 二宮清純 PHP新書参照) 常識、先入観、決めつけで、その人の能力や実力を判断することは、その人の将来の成長を台無しにするものだということがよく分かります。 ですから安易にそういうものに頼り切ってはいけないということです。 森田先生のように実際に現地に行って自分の目で確かめる。 実験をして事実確認を行う。 せっかちに結論を出すのを急ぐのではなく、両面観、多面観で検討してみる。 事実こそが私たちがよりどころとすべきことなのです。 そういう態度で生きていくことが、自他ともに将来の可能性を広げるきっかけになるということを、森田理論学習でつかみ取っていきたいものです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024.06.01 23:32:44
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