カテゴリ:感情の法則
萩原一平さんのお話です。
脳の中にある情報には、生まれた時から本能的、遺伝的に脳に組み込まれている情報と、経験や学習によって後天的、文化的に脳に蓄積された情報があります。 脳はこれらの情報を活用して意思決定を行い、身体各部に指令を出して行動につなげ、外部の変化に対応しているのです。 (ビジネスに活かす脳科学 萩原一平 日経プレミヤシリーズ 162ページ) ここで大切なことは理性的な脳である前頭前野は、ゼロから思考しているのではなく、すでに脳に蓄えられた様々な情報を取り出して、それと突き合わせながら意思決定をしているということです。過去に同様の事例に関する成功や失敗の情報が全くない段階では、適切な意思決定はできません。そのときは恐怖に身がすくんで固まってしまうことになります。 ここでいう情報は、長期記憶して大脳に格納されているものだと思います。 永久保存されているために思い出すことができる記憶のことです。 長期記憶には、主として運動記憶と体験記憶があるといわれています。 学習記憶もありますが、これはすぐに忘却の彼方に消え去ってしまう短期記憶が多いようです。運動記憶は自転車の乗り方や水泳のクロールの泳ぎ方など体を使って覚えた記憶のことです。一旦覚えてしまえば、長期記憶を取りだして、いつでも活用できます。 体験記憶は、エピソード記憶と言われています。 自分が過去に体験した記憶のことです。 私はこの記憶に注目しています。 この長期記憶には、成功体験と失敗体験が大きな影響を与えています。 成功体験は目指していた目標が達成できたこと。 予想よりも事態の展開がうまくいったこと。 思わぬ幸運が舞い込んだ。他人から評価されたことなどです。 快の感情や達成感をもたらしてくれた楽しくてうれしい体験です。 失敗体験は、ミスや失敗をしたこと。他人から仲間外れにされたこと。 親や他人に叱責・非難されたこと。生命の危険を感じたこと。 恥ずかしかったこと。悲しい思いをしたこと。後悔したこと。 などの体験です。 成功体験や失敗体験が同じような割合で長期記憶として収納されているわけではありません。成功体験よりも失敗体験の方が何倍も多く保管されています。 ほぼ後悔や失敗体験のエピソード記憶で占められていると思っていた方が無難です。それは太古の昔、安全を確保して生き延びるための知恵だったからです。 成功体験も役に立ちますが、それよりも失敗体験をより重視しないと生き延びることができなかった時代が長かったということです。 以上の知識をもとにして私たちが問題視している不安、恐怖、違和感、不快感について考えてみましょう。 それらはほとんどネガティブで否定的な長期記憶と結びついています。 たとえば人が怖いという対人恐怖症の人はどうでしょうか。 過去に冷たくあしらわれた。仲間外れにされた。 一人ぽっちになり心細かった。人前で叱責、非難、否定された。 過保護、過干渉、放任状態にされた。腹が立った。恐ろしかった。 そういうエピソードが夢にも出てくるような状態ではありませんか。 新しい人間関係に直面する時、脳の中では、それらのネガティブなエピソード記憶を取り出してきて、対応策を検討しているのです。 これではよい結果は出てこない。 どうせまた他人に冷遇されるに違いない。 対立してイヤな気持ちになるのが目に見えていると判断するようになるのです。 こうして、扁桃核で不快に分類された感情は、ノルアドレナリンによって青斑核に送られ、そこから防衛系神経回路を経由して脳全体に送られるのです。 他人は自分をイライラさせる恐ろしい存在だ。 この回路が作動すると、脳は自分を守ることに専念するようになります。 積極的、建設的、創造的な行動には向かわなくなります。 いくら言葉で叱咤激励しても、脳が自己内省的に活動しているので体が動かなくなるのです。 この悪循環は何としても断ち切ることが大切になります。 これは明日の投稿課題とします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2022.05.30 06:26:18
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