カテゴリ:森田理論の基本的な考え方
生活の発見会の集談会に参加していると、「人のために尽くす」という言葉がよく出てきます。神経症で苦しんでいる人は、考えることや実行することが自己中心に偏っています。
この態度が神経症を悪化させていますので、それを緩和するためには、「人のために尽くす」ことが有効ということだと思われます。 「人のために尽くす」行動は、立派で尊いことですが、継続的な実践は難しいのが実情です。 実はこの言葉を森田先生は使われていません。 森田先生が言われているのは、人の役に立つ人間になりなさいということです。 日常生活の中で、自分のできる範囲で、無理なく人の役に立つことを実践する。 ・ゴミが落ちていたら片づける。 ・雨が降ってきたとき、傘を貸してあげる。 ・集談会で会場作りを手伝う。 ・簡単な世話活動を引き受ける。 ・使わなくなったものを貸してあげる。 ・役に立つ最新情報を提供する。 ・バスに乗る前に小銭を用意しておく。 これなら実践可能だと思います。 神経症で苦しんでいる人が、いきなり「人のために尽くす」ことを目標に掲げるのは少し無理があるように思います。 それは自己犠牲が伴うからです。 この点について、次のような発想の転換を図ることを提案します。 人のためではなく自分のための目標に付け替えるということです。 そうすると大いにやる気が出てきます。 例えば、「他人の喜ぶ笑顔を見たい」「他人が感動の涙を出すほどの影響を与えたい」という実践目標に変えるというのはどうでしょうか。 この実践目標に取り組むことになると、自分自身にやりがいが生まれます。 それはこの目標が他人の為ではなく、自分自身のためにやっていることになるからです。しかもそれが結果として「人のために尽くす」ことにもなっているのです。 この考えに立つと、行動に絶えず工夫や改善が生まれます。 他人から言われたことを何とかやりこなすことも、それはそれで立派なことですが、相手からしてみると、それはやって当たり前でしょうということになります。 例えば、レストランに行って値段に見合った料理が出てきた場合、支払った金額と同程度の料理だという気持ちになると思います。 別に感謝、感動することはありません。 ところが、思った以上においしい、接客態度がよい、盛り付けが見事である、またぜひ行ってみたいという気持ちになることもあります。 これは料理人が、お客様のために手間暇をかけて食材を探し、仕込みに時間をかけて、腕によりをかけて調理している。 お客様に喜んでもらいたい、感動を与えたいという気持ちがないとできないことです。 それ以上に、想像をはるかに超える料理人の場合、予約を取るのが1年先というような場合もあります。 あるいはそのお店に行列ができていて、食べるまで何時間も待つ場合もあります。 また感動してそのお店に行くときにお土産を持参する人がいる場合もあります。 そしてそのお店を周囲の人に大いに宣伝してくれる場合もあります。 これは「人のために尽くす」というような言葉を乗り越えていると思います。 こういう料理人は、「他人の喜ぶ笑顔を見たい」「他人が感動の涙を出すほどの影響を与えたい」という大きな目標を持っていないとできることではありません。 「人のために尽くす」というのは、結果としてそうなっていたということだと思います。この言葉を掛け声だけで終わらせないためには目標の付け替えが必要になるのではないでしょうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024.06.03 22:38:32
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