カテゴリ:人間関係、不即不離
内田樹氏のお話です。
「嫌いな人とは付き合わない」という生き方をお勧めしたい。 嫌いな人と、「共に活きる」というのはなかなか立派な心がけではあるが、適性な距離を置き、できるだけかかわりあいにならないことをお勧めしたい。 「嫌いな人間」を我慢して、「この人にもそれなりにいいところがあるんだ」とか、「嫌いな人間を我慢して受け入れることが人間の度量なんだ」とか自分に言い聞かせ続けていると、「何かを嫌う」という感受性の回路が麻痺してしまう。 「恐怖と嫌悪」の感情の発生は、生物が生き延びるための利器である。 「嫌う」回路をオフにするということは、コミュニケーション感受性をオフにするということであり、それは思っている以上にリスキーな選択である。 「我慢する人」は、日々のコミュニケーションの中で行き来する非言語的シグナルの多くを受信できなくなる。 それに慣れてしまうと、感度はどんどん鈍くなってしまう。 ですから、「嫌いな人」と無理をして付き合ってはいけないのです。 それでは好きな人間、気の合う人間とだけ付き合っていけばよいのか、と疑問が湧いてきます。 嫌いな人間と調和していく能力は、社会的な生き物である人間には不可欠だ。 人間社会は、他者への共感力、受容力、許容力は絶対に必要な資質だ。 これはもっともな意見だと思います。 しかし、内田氏は、その考え方は短見であるといわれている。 そもそも「気の合う人間」なんて存在しない。 「好きな人」なんて幻想でしかない。 そんなことを期待しているといつか裏切られるのだ。 (知に働けば蔵が立つ 内田樹 文藝春秋 参照) 内田氏の見解はとても刺激的です。 早速森田理論でその是非を考えてみましょう。 内田氏は「恐怖と嫌悪」の感情が湧き上がってくることは、感受性が鋭いということであり、それを無視するようなことをすると、感性が鈍くなっていくと言われています。 だから「恐怖と嫌悪」の感情は抑え込んではいけない。 この考えは私も賛成です。 神経質性格者は高性能レーダーを標準装備しているようなものだと言われます。 その感受性が鈍くなっていくことは、最大の長所が薄れていくことになります。 「恐怖と嫌悪」の感受性は、そのままにして他人と上手に折り合いをつける技について考えてみたいと思います。 自分が嫌いだと感じていると、それは相手に伝わります。 その現象をミラーニューロンの働きから説明する人もいます。 普通嫌いという感情は、顔つき、態度、発言内容、行動に出ます。 相手は敏感にそれをキャッチして、防御態勢を敷いてきます。 すぐに敵対関係になってしまいます。 これに対して、森田では感情と行動は切り離しましょうという考え方です。 過度に感情に振り回されないようにすることが大切です。 相手から見て、どんな感情が湧いているのか全く分からないという行動を心がけると、人間関係が悪化することをなんとか止めることができます。 プロ野球の選手でいえばポーカーフェースの人です。 打者でいえば、打つ気満々というよな素振りを見せて、相手の裏をかくという話を聞いたことがあります。 これは広島カープの新井新監督の現役時代のエピソードです。 野球は力と力のぶつかりように見えますが、実は心理戦なのです。 役者さんと同じように上手に演技をするという考え方ですね。 でもこれは口で言うは易く、行うは難しです。 でも感情は自由に泳がせておいて、行動はそれに振り回されないように注意するという意思をしっかりと持っていると、ある程度は対応できるようになります。 こうした成功体験を積み重ねていくことが大切になります。 これができるようになった人は、「不快感情の取り扱い主任者」として免許皆伝の称号を与えて、その能力を高く評価したいものです。 次に「気の合う人間」なんて幻想だという話ですが、これは森田理論の「不即不離」に関連する話です。 実際には、親しい人でも気の合うときもあるし、気が合わないときもあります。 気が合わない時に感情を爆発させていたのでは、人が寄り付かなくなります。 意気投合したときは親しく付き合い、気まずい関係の時はすぐに離れる。 そして時と場所を変えて改めて出直すようにする。 これが臨機応変にできるように訓練を重ねていくことが大切になると思います。 意気投合した時はベタベタとくっつく。 気まずいときは全く近寄らないのは人間関係の持ち方としては問題です。 必要な時に、必要に応じて、必要なだけの人間関係を結ぶことを基本にする。 この気持ちをしっかり持って、人と付き合うことです。 そうしないとすぐに裏切られた、あんなにイヤな人とは思わなかったということになりやすいです。 これは人間関係の距離の持ち方を間違えているか、そういう気持ちが頭の中になかったということになります。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2023.02.19 22:13:07
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