カテゴリ:森田理論の基本的な考え方
藤田紘一郎氏のお話です。
横浜国立大学におられた青木淳一教授はヒトに嫌われているダニ類の研究を40年間も続けておられる。 ある時、青木教授はこんなことを私に語ってくれた。 「藤田先生、地球に生きている生き物はすべて意味があるんですよ」と。 「ダニの話をすると、すぐ寄生虫としてのダニ、衛生害虫としてのダニの話が先行してしまう。しかし、実は無害のダニはたくさんいるのです。 ヒトにしか寄生しないダニは、ヒゼンダニとニキビダニの2種類にすぎません。 残りの大部分は、大自然の中でのんびりと暮らしている。 たとえば、ササラダニ類は腐りかけた落ち葉や枯れ枝をコツコツ嚙み砕いて食べ、糞として排出している。 この糞をバクテリアがさらに分解する。つまり、自然界のゴミ掃除人なのです。 このダニがいなければ自然界のゴミは片付けられないのです。 少しばかり嫌な奴を含んでいますが、ダニ族は私たち人類の大切な共存者なのです」(清潔はビョーキだ 藤田紘一郎 213ページ) 青木先生のお話は、森田理論の「他人の性を尽くす」という話に通じるものがあります。 「他人の性を尽くす」とは、その人が持っている存在価値、資質、能力を正しく評価して、居場所や活躍の場を確保して、命ある限りとことん活かしてもらうということです。 その人もやりがいができ、生まれてきたかいがあったということになります。 お互いがお互いをリスペクトする関係性が生まれると争いなどは起きないのではないでしょうか。共存共栄を目指すことが人類の繁栄につながります。 人間は強い自己保存欲求を持っていますで、自己中心的になります。 その結果、自分の価値観に合わないものを排除するようになります。 紛争、侵略、戦争などは他者の存在価値、資質、能力を無視して、他者を自由自在にコントロールしようとするところから起きています。 藤田先生は、人間の皮膚には皮膚ブドウ球菌や黄色ブドウ球菌をはじめとするたくさんの皮膚常在菌が存在して、皮膚を守っているといわれています。 それらを抗菌グッズで常に攻撃していると皮膚常在菌は弱ってくる。 すると体の中の白血球がそれらを攻撃して多量の活性酸素を生じ、皮膚が障害される。 国立医薬品食品衛生研究所の鹿庭正昭氏は次のように語っている。 皮膚の上に棲みついている常在菌も、中性脂肪を分解して酸をつくることで、他の細菌がとりつくのを防いでいると考えられている。 抗菌防臭加工した衣類ばかりを着ていたらこうした常在菌がどうなるか、きちんと調べていくべきだ。 子どもの皮膚の形成は、生後2年ごろまでに完了する。 逆にいえばそれまでは、皮膚そのものの抵抗力は十分ではないということだ。 病原菌にむやみに犯されないようにするためにも、少なくとも幼児や、同様に抵抗力が落ちた高齢者には、常在菌の助けが必要だろう。 「父を追う 娘の手には ファブリーズ」という笑えない川柳がある。 そういえば抗菌グッズは毎日CMで見かけます。 特に神経質者のなかに細菌を極端に恐れている人がいる。 エスカレーターのベルト、電車の取っ手に触れない。公衆トイレで用が足せない。 長風呂をして体を石鹸でごしごし洗う。アルコールなどの抗菌グッズを持ち歩く。 抗菌マスクを持っていないと他人がいるところに出かけられない。 これらはすべてウィルスや細菌を目の敵にしている。 不愉快、不快な気分をすぐに払拭しないと次の行動に移れない。 そういう人は腸のなかに常在菌が約100種類、計100兆個住んでいるのをどう考えておられるのでしょうか。微生物の専門家は「腸内細菌は臓器の一つ」と言っています。 食べ物の消化吸収、外から入ってきた病原菌を撃退している。 腸内細菌は悪いものもあるが、基本的には味方である。共存共栄を目指す必要がある。抗生物質などで腸内細菌を殺してしまうことは、自分の命を危うくしているのである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024.03.02 06:35:08
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