図書館で『習近平の敗北』という本を、手にしたのです。
表紙のコピーに「中国の危機」とあるように・・・
かなりの中国ウォッチャーでなないかと思ったのです。
【習近平の敗北】
福島香織著、ワニブックス、2019年刊
<「BOOK」データベース>より
無能でも皇帝になれる共産党体制、すさまじい牢獄国家で暮らすということ、日本は中国とどう向き合うべきか!-政変、動乱、分裂…中国を襲う9の厄災。
<読む前の大使寸評>
表紙のコピーに「中国の危機」とあるように・・・
かなりの中国ウォッチャーでなないかと思ったのです。
rakuten習近平の敗北 |
「第二章 嫌われ習近平に漂う政変のにおい」で習近平政権の変節を、見てみましょう。
p73~77
<毛沢東ばりの対外強硬路線>
また習近平の外交政策は毛沢東的対外強硬路線に近くなりました。鄧小平は「外国に学べ」とスローガンをうち、改革開放経済を進めた国際協調路線を打ち出してきました。これを「韜光養晦」、つまり、いつか大国として復活しようという野心を隠して、実力が不足している時代は、国際社会のスタンダードに自ら沿う姿勢をアピールし、外国から吸収できることはできるだけ吸収していく戦略でした。
この結果、米国や日本の資本や技術を呼び込んで中国の高度経済成長時代を実現し、WTO(世界貿易機構)にも加盟し、世界の向上として安価な労働力を使った低廉な中国製品によって世界市場を圧倒することができました。また豊かになってきた中国巨大市場は、世界から新たな消費市場のフロンティアとして垂涎の的となりました。江沢民、胡錦涛政権の外交路線もこれを受け継ぐ形で多極外交が基本でした。
ですが、習近平は、こうした野心を隠して「学ぶ姿勢」「国際スタンダードに寄っていく姿勢」の鄧小平的多極外交から、「中華民族の偉大なる復興」という野心を高らかに掲げ、世界が中国のスタンダードや秩序に合わせていくべきだという、中華思想的な大国外交路線に切り替えていきます。
米国に対しても、いずれ中国が米国と並ぶ大国になるのでそのように扱えとばかりに「米中新型大国関係」を提案しました。南シナ海の領有権を他国と争う岩礁島を実効支配していき、国際法廷(常設仲裁裁判所)で違法行為だという判決が出ても、「そんなものは紙切れだ」と完全に無視しました。
これはちょうど米国のオバマ政権がレームダックを迎え始め、EUの矛盾やほころびも顕在化してきたのに比して、中国は五輪(2008年の北京オリンピック)を経験し、リーマンショックを切り抜け、国際社会で評価が高まってきたので、国家として自信を持ってきたということも関係しているのでしょう。
ですが、中国をグローバル経済の牽引国と認め、責任ある大国に成長すると期待していた国際社会は西側の普遍的価値(〇)を完全否定して、中華秩序、中華的価値を受け入れよ、という中国の主張を受け入れるはずがありません。
習近平はコンプレックスが強く小心者ですが、ものすごく自信過剰で傲岸不遜なところがあります。
文革期に思春期を過ごし、ろくに勉強もせず、毛沢東の政治のやり方、権力闘争のやり方を脳裏に刻み付けていることから“文革脳”と呼ばれています。若い時代に海外留学経験もない彼は、国際情勢や国内情勢を読み違えたのだと私は思います。
結果として、あれほど親中的だったオバマ政権を怒らせることになります。米国はアジア太平洋リバランス政策をとって対中強硬姿勢に転じてきました。改革開放以来ずっと中国に対して一衣帯水の隣国として支援し、天安門事件後の国際的経済制裁のときにもいち早く中国との関係を正常化させた日本とも厳しい対立関係に入りました。
これまでの中国は、米国とちょっと関係が悪くなると日本と関係を良くするようにし、日本に対して強硬になるときには米国との関係を融和的にするというふうに、バランスをとってきました。そうすることで日米両国とも経済関係は良好にいじするという合理的な判断に基づく多極外交を行ってきたのですが、習近平体制になってからの中国は周辺諸国すべてに対して傲岸不遜で、攻撃的な姿勢になりました。
この延長線として、米国にトランプ政権が誕生し、米中冷戦構造に向けた西側世界の対中包囲網が開始されることになったのです。
<クーデター未遂に脅えて大粛清>
鄧小平が作り上げた中国共産党の集団指導体制()を破壊し、毛沢東のような独裁者になりたがっている危険な指導者、それが習近平であると、中国共産党内の右派も左派も気づき始めました。
鄧小平路線や胡耀邦の信望者たち、つまり改革派、自由派、民主派の党内知識人は習近平を嫌い、彼のやり方はまずいと考えます。鄧小平システムが破壊されるということは、再び、動乱を利用した文化大革命や天安門事件のような血生臭い権力闘争が起こるかもしれません。
新左派、保守派も、習近平を危険視するようになりました。習近平はあたかも毛沢東のようになろうとしているけれど、習近平に毛沢東の後継を名乗るようなカリスマ性はひとかけらもありません。また中国共産党の規約にある個人崇拝の禁止を堂々と侵す習近平に社会主義国家指導者としての資質を疑う人も多いのです。
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