鴨川ホルモー 万城目 学
京の都で繰り広げられる、風変わりな「鴨川ホルモー」なる競技に、魔がさして(いえ、神がさして?)足を踏み入れてしまった、とある大学生の奇想天外痛快青春ラブコメディ。表紙は、ビートルズのアビーロードのアルバムジャケットを意識したような作り。「ホルモー」という競技は、陰陽道に基づき千年の歴史を持ち、京では一定の人物内では、由緒正しき伝統ある競技らしい。小説のかなりの部分(前半100ページ以上)を、この競技の由来やルールに、丁寧な解説を割いているので、ここでの野暮な説明は省略するが、簡単には以下の様。都大路で、京都の大学生(と言っても、京大青龍会・立命館白虎隊・京都産大玄武組・龍大フェニックスの四チームに限られるようだが)が、自ら習得した鬼言葉をあやつり、鬼を操作し、勝負を競い合う。*鬼は、その身に大学カラーと同じ色の襤褸をまとい、体長20cm程度で巾着絞りのような顔を持った奇妙な姿をしている。 これだけでは、未読の方には、なんだか訳分からないと思うけど(汗)神社仏閣の多い京都ならではの、奇妙で風変わりな競技の様子は、段階的に宗教的儀式なんかも踏みながら、想像を超えるハプニング続出で抱腹絶倒。「こんなこと、ありえない!」と半ば呆れながらも、後半からは、主人公のもどかしくも悩ましい恋患いも絡めながら、友情と個々の心理的葛藤も含めて、どんどん面白くなっていく。前半は、ちょっともたついた感があり、この先面白くなるのかな?という疑惑を持っていたが、後半部に突入すると、加速度上げて夢中で頁をめくる自分がいた。三好兄弟の姿が、途中から、何故か「ザ・たっち」に重なってしまい、困った(笑)小説の内容は、全てフィクションで出鱈目の陳列なんだけど、よくこんな空想を編み出したなと感心するばかり。後半部の競技状況は、読んでいて結構白熱するし、どんな結果が待ち受けるのか、はらはらもする。恋の行方も物語のエンディングに向かい、思わぬ方向へと導かれる。あと、誰にでもある、モノへのこだわり・呪縛の解放というテーマも織り込まれ、この時期にありがちな個々の心理的葛藤を超える、若者の成長物語とも、とれそうだ。奇抜なアイデアで構成され、斬新ながらも全体的にほんわりと温かい雰囲気のある、爽やかな青春小説だった。面白かった!